2008年 ベネティア映画祭 銀熊賞
2007年 アカデミー男優賞
2007年 ゴールデン・グローブ 男優賞 受賞作品

1890年代から1900年代の初め頃に、アメリカで石油発掘を仕事にして、巨額の富を手にしたダニエル・プレインビューが主人公の作品で、その成功と破滅を描く。

石油で一儲けするために、ダニエルは、アメリカ中を息子H.W.と歩く。
成功した折は、自宅で人から遠のき、一人で暮らしたいと言っているダニエルは、人間に対しての嫌悪感が強い。
人を見ると、その人のネガティブな部分にしか目がいかず、その人の心の闇を見る。

そんなダニエルの元に、石油のある土地があるという情報が入る。
イザベル州 リトル・ボストンという所だ。
その土地をリサーチしたダニエル親子は、石油が出ると言う確かな証拠を手に入れる。

まず手始めにハミルトン家の土地を手に入れる交渉をする。
交渉に立ち会ったハミルトン家で、イーライという青年から、教会を建てるために資金を要求される。
イーライは、信仰を深めて、広く伝道をすることを願っていた。

ダニエルはその教会の資金も条件に含めて、交渉は成立する。
そしてその付近の土地を広く買い占める。

近隣の人々に石油が出ることの長所を伝え、石油発掘に取り掛かる。
昔からの仲間を集め、石油を掘る。
出た石油はパイプラインをひき売り捌く。

荒野ばかりで、不毛と思われていたこの土地を買い占めたダニエル親子は、程なく石油を発掘し、巨額の富を手に入れることになるが、その時の爆風で息子のH.W.の聴力は失われる。

大手の会社からの譲渡の話しにも耳を貸さず、ただひたすらダニエルは働き富を手に入れようとする。

一方、悪魔祓いなどで地域の信仰を集めるイーライをダニエルは快く思わない。
人が自分よりも成功することが許せないのである。
約束のお金を要求するイーライを殴り痛めつける。

そんな時に、ダニエルの弟と名乗るヘンリーという男が現れる。
ダニエルの妹のことも知る彼のことをダニエルは不信感を持ちながらも身近に置くことにする。

だが、息子H.M.は、そんなダニエルの行動に反発する。
そんな息子に手を焼いたダニエルは、息子を彼の手元から離す。

ヘンリーと一緒に働くダニエルだったが、ヘンリーが本当に自分の弟かどうかは解らない。
片親は違っていても、本当の兄弟ならどこか似ている所があるはずだとダニエルはヘンリーの様子を窺う。

酒と女に溺れるヘンリーの姿を見たダニエルは、直感的に弟ではないと確信する。
問い詰めるダニエルに真実を告げる男に、ダニエルの怒りは向かう。

息子を呼び戻したダニエルは、巨額の富を手にする。
欲しかった家も手に入れる。
孤独も富もあるが、ダニエルはただ酒に溺れる日々を送る。

教会の伝道で遠くに出かけていたイーライが、戻ってきた。
イーライは様々な土地で今までにしたことのない苦労としたという。

そして、そんなイーライにダニエルはあることを要求する。
ただ成功を追い求め、それを実現させる。
一人で誰も信じられず、不信や妬み、怒りがあり、競争心のみの世界に生きる。

自分の元を去ろうとする息子にダニエルは伝える。
『お前は孤児だ。砂漠で拾った子供だ』と。

映画のシーンの中で、この一人息子を可愛がるシーンが出てくる。
愛おしく、ただ抱きしめるダニエルのその姿は、愛情に溢れる姿だ。

彼の求めたものはいったい何だったんだろうか。
重く心に残る物語だが、孤独と真正面からと向き合う、一人の人間の弱さと残虐さを感じさせる、そんな映画だった。

(J)

「ゼア・ウィル・ ビー・ブラッド」 There will be blood