2003年 制作

6人の男女が、フェスティバルホールのジャズ音楽に乗せて、その生き方を変えていく様を描く。

三日間降り続く雨の中を、タクシードライバーのジョンは今日も車を走らせている。
彼は1週間前に息子を亡くしていた。
顔色も悪く、冴えない彼に乗客の反応は様々だ。

サンダーキングはタイル職人だが、降り続く長雨にタイルはすっかりダメになっていた。
何も悪いことはしてないのにどうしてだと、怒りを胸に抱くがどうしようもない。

デニスは頭の弱い男。
鉄道の仕事をしているが、上司のジムはそんな彼を何処かに移動させようとしている。

アルコールに溺れるワルドは、今日も酒浸り。
飲むお金に困った彼は、息子のマイケルの家に行き言葉巧みにお金の無心をする。
何一つ文句を言わず、マイケルは父親の言う通りにお金を出す。

家族にも仕事にも恵まれ、自分の人生は幸せだと言うアレックスは、今日も妻と食事を楽しむ。
最近夫を亡くした妹のライザが家に居る。
ライザのためにと食べ物を買い、土砂降りの雨の中を家に帰る途中に、彼らは、食べ物を求める帰還兵の浮浪者に出会う。
アレックスは、妻にデザートのチョコレートムースを彼にやろうと提案するが、妻はいい顔をしない。

テスは、薬物依存症だった。
家で友達と薬物注射をしている。
テスには娘が居た。
名前はエリンで判事夫婦が引き取っている。
判事はテスをエリンの子守りとして家に入れて、娘と会えるように世話したが、その代わりに判事は、テスに肉体関係を求める。

この6人の登場人物たち、癖もあり個性も豊かだ。

デニスは、鉄道のレールを絞めるボルトを盗んだと疑われ、本社に行き適正テストを受ける。

本社の担当から職場不向きと査定されたデニスは、電車のこない線路のボルトを外す。
いくつもいくつも外す。
そしてそのボトルを持って彼は旅立つ。

数か月の家賃の滞納で、家を追い出されるかもしれなくなったサンダーキングは、友達にお金を借りようとするが駄目、車を売ろうとするが売れる直前に故障する。
どうにかしてお金の工面をしようとするがうまくいかない。
そして、どんどん追いつめられる。

そして彼は、数か月前にした仕事の風呂のタイル張りで未納金があるロビンソン夫人に電話するが、7か月前に夫を亡くしたロビンソン夫人は電話に出ない。
そして彼は、夫人に直談判を決意する。
すぐにお金を支払わない限り帰らないと、ロビンソン夫人の家に居座る。

ワルドは、一緒に暮らす3人の老女たちに、口から出まかせを言う。
息子が面倒を見ないとか様々な事を言いふらす。
それを知ったマイケルだったが、彼は父親には何も言わない。
ただあきれるだけだった。

浮浪者に一件以来、妻に対する見方が微妙に変化したアレックスは、妻の友人との食事会で、妻の意見を聞き、再びびっくりする。
燃え盛る部屋の中に、シェークスピア全集と一匹の猫が居たら、どちらを選ぶかという友達の問いかけに、迷うことなくシェークスピア全集を選んだ妻に対して、彼は思わず『君は冷たい人間だ』と叫ぶ。
彼の心の中にわだかまっていたものが言葉として出てしてしまうのだった。

降りしきる雨の中、彼は家を出るための準備をする。
人生の最後の日に自分の生き様を悔いることは嫌だと…。
また変われなかったことを悔やむのも嫌だと言う。

タクシー運転手のジョンもまた、行かなければならないところに行かず、ただ死んだ息子のことを嘆く。
テスも人生をどうすることも出来ないものだと言う。
そして、彼女の選んだ道は、自分の手で娘を殺すことだった。

破滅的な生き方を選ぶことも出来る。
破滅的とは言わなくても、刹那的な生き方を選ぶことも出来る。
何がどうさせるのか?

ジャズの音楽が美しく流れる中、登場人物たちは、それぞれの思いでそれぞれの人生の選択をする。

(J)

「レイン」 Rain