2013年 イタリア制作

将来、俳優になることを夢見るピエトロ・ポンテキエヴェッロは、その夢と、助監督をしている売れっ子・マッシモを追いかけてローマに来た。

いとこのマリアと同居していたが、彼は安くて豪華な古い屋敷を見つけて引っ越しをする。

マリアは弁護士事務所に勤めていて、何人もの弁護士と関係を持っている。
ピエトロにも男でも女でもいいから、交際をするように勧めるが、彼にはマッシモ以外の人には興味がない。

屋敷で暮らしはじめたピエトロだが、何処かで話し声や笑い声が聞こえたり、鏡に人が映ったり…。
驚きおののいた彼はマリアを呼ぶが、マリアには彼らの姿は見えないらしい。

屋敷に住む幽霊は8人居た。
イヴァンという太った男の子。
エレナやレアと言う名前の女性たち。
ベアトリーチェとユスフは夫婦だ。
ルカ、そしてアンブロージュとアポロニオ。

彼らは、第2次大戦頃にヨーロッパ各地で、演劇をして回っていたアポロニオ劇団の仲間たちだった。
自分たちが死んでいることを知らないらしくて、この屋敷から出ることが出来なくなっていた。

彼らはピエトロに、りヴィアという女優を探してほしいと言う。
彼女が自分たちをここから出す手がかりを持っていると言う。

共に暮らすことを望んだマッシモからは、コテンパンに言われ、マリアからも屋敷の人たちのことで怪訝な顔をされる。

初めは慄いていたピエトロだが、次第に生活に馴染んでいく。

演劇のオーディションを受けるピエトロに、彼らは演技のアドバイスをする。
ピエトロも彼らに練習風景に心から賞賛を送る。
が、マリアは彼の精神状態を疑い、幻覚と決めつける。
医者から養生するように言われたピエトロは、生活を変えるためにもと、りヴィアを探して、事の真相を探ろうとする。

やっとの思いで出会ったりヴィアから、1945年当時のアポロニオ劇団のことを聞く。
彼らは実はスパイで、誰かに密告されて、屋敷の小部屋にに匿われる。
その家の主は拷問されて無くなり、彼らは不運にも古いストーブが原因で亡くなったことを聞く。

彼らにも真実が伝わる。
そして、閉じ込められていたこの屋敷から、彼らは解放される。

ストーリーは単純と言えば単純なものだ。
幽霊に出る映画にしては、恐くもないし笑いころげるわけでもない。

ほのぼののした情緒が映画全体に漂う。
幽霊たちもピエトロも、互いに相手に対して心配りや気遣いがあり、その上品な香りが画面に漂う。

いとこのマリアが妊娠し、相手が特定できない。
でも悲愴感もなく、あっけらかんと別の相手を探してくる。
どこまでも明るく楽しい、まるで真っ青なイタリアの空のような、その底抜けの明るさが、何とも心地よい映画だった。

(J)

「異人たちの棲む館」