2012年 第25回東京国際映画祭
東京サクラグランプリ
優秀監督賞 受賞作品

ヨセフは、18歳で空軍に入隊するための健康診断を受けた。
将来は歌手になるのが望みだ。
ところが血液検査で、両親とは違う血液型A+と出てくる。
両親は二人ともA-で、考えられない検査結果だった。

医師のダヴィッドからそのことを告げられた母オリットは、夫でありヨセフの父のアロンに伝える。
オリットは、浮気を疑われるが身に覚えがない。

医師ダヴィッドは、直感から、ヨセフの生れたハイファの病院に出産時のことを問い合わせる。

病院からの呼び出しで両親はハイファの病院に向かう。
そこにはもう一組の夫婦が居た。

ヨセフが生まれた18年前は、ちょうど湾岸戦争中で、ヨセフが生まれてすぐ赤ちゃんを別の所に一日移したらしい。
その時に看護師が赤ちゃんを取り違えたという。
DNAも二人の子どもの取り違えを証明していた。

もう一組の夫婦の名はアル・ベザス夫妻。
18歳になる息子の名はヤシンという。
ヤシンはフランスで大学に受かり、将来は医師になることを目指していた。
膝の悪い父サイードの為でもあった。

怒りで席を立つアロンだが、どうすることも出来ない。
イスラエルに生まれ、ユダヤ人として育ったヨセフと、方やパレスチナでアラブ人として育ったヤシン。

双方の両親とも、子どもたちに事実を告げるしか仕方がない。

ヨセフとヤシンは両親から取り違えの事実を告げられる。
二人は混乱する。
両親も混乱する。
どうしたらいいのだろう?
誰にも答えは見つからない。

ヨセフの母オリットの提案で、二組の家族は双方の家族を連れてテルアビブで出会う。
しかし、ヤシンの兄・ピラルは、ユダヤを憎み、そのユダヤの血の流れるヤシンを拒否する。
『弟は死んだフィラズだけだ』と言い続けヤシンを拒絶する。

事実を知ったヨセフは、ユダヤ教にこだわるが、洗礼を受けていても改宗しなければならないことを知る。
昨日までと同じ人間・ヨセフなのにどうしてこうなるのか。
怒りが募る。

ヤシンはユダヤを認めようとしない兄とぶつかる。

ヤシンの母ライラは、何変わらずいつもでも自分の子どもだとヤシンに言う。
ヨセフの母オリットも父アロンも自分もヨセフの両親だと言う。

その中で少しづつ、二組の家族の交流が始まる。

アロンとサイードは、ユダヤとパレスチナことで揉めながらも、少しづつお互いに譲歩し始める。
揉めていても何も始まらない。

パレスチナのことを何も知らなかったヨセフは、ヤシンを通じてパレスチナのことを知る。
塀に囲まれた貧しいパレスチナの生活を見聞きする。

18歳まで築いてきた二人のアイデンティティは、一体なんだったんだろか。
一体誰を父と呼び母と呼ぶのか。
これからどうしたらいいのだろうか。
どう生きていけばいいのか。

ヤシンはヨセフに言う。
『たとえ何がどうなっても、自分たちの夢を叶えよう』と言う。

サスペンスでもないのに、見ていてドキドキする。
ヤシンの両親もヨセフの両親も二人の子どもをただじっと見つめる。
心が複雑に揺れ、思いが交差する様をふとしたことで見事に描く。

そして最後に二人が出した答えは…。

少し出来過ぎの様な気もするが、爽やかに物語は描かれている。
すぐ近くの所にありながら、行き来するには通行証がいる。
宗教・政治・思想など全く違う国の二人の子どもたちの、偶然がもたらした物語。

現実の混迷する対立も、こんなふうにお互いを知り、怒り、罵り合いながらも、それでも理解しようとしながら助け合う。
そんなふうだったらいいのにな~。
と思った。

(J)

「もう一人の息子」