2010年 制作
シェークスピアの最後の作品であるテンペスト(題名『嵐』)を、映画にしたものである。
映画でしか表現できない特殊撮影で、
内容豊かに表現している。
ミラノの強大な君主であったプロスペローは、実の弟の策略で、一人娘のミランダと国を追われて海に流された。

プロスペローは、ミラノ君主であった夫が亡くなった後、遺言で君主の座に就くが、魔術と学問好きで王座に就いた後も政治を弟に任せていた。

弟アントーニオは、姉は黒魔術を操る魔女だとデマの噂を流し、プロスペローを敵視するナポリ王に追放させたのだった。
海に流された折に、ナポリ王の命令で追放の指揮を執っていたゴンザーローは、ボロボロの舟に、衣類と食糧とプロスペローの好きな本を秘かに積んだ。

12年が経ち、プロスペローとミランダの棲む岩屋の近くの海を、ナポリ王とアントーニオの乗る船が通りかかる。

そして、プロスペローは魔術で、島で暮らす妖精エアリエルに嵐を起こさせて、船を破壊する幻想を見させて、乗船していた人々を島に上陸させる。
数人づつバラバラにして…。

島には、悪魔が魔女に孕ませた子である醜いキャリバンも居た。
彼は、自分の島をプロスペローが魔法で奪ったと、彼女を憎んでいた。
が、キャリバンに言葉やいろいろな事を教えたのもプロスペローであった。

キャリバンにどれほど親切にしても、絶えず不足を言い、美しく育ったミランダに手を出す始末だ。

島に辿り着いたそれぞれの人たちは、お互いに船に乗船していた人たちは死んだと考えていた。

ナポリの王子ファーディナンドは一人ぼっちで島に着く。
ナポリ王と今はミラノ大公のアントーニオと付き人の一人とゴンザーローは一緒だった。

互いの無事を知らない彼らに、プロスペローは妖精エアリエルの力を使い、様々な事を見せて様々なことを体験させる。
一見、復讐劇に見えるこの物語は、最後はすべてハッピーエンドだ。

プロスペローに罪をきせた弟やナポリ王は、その罪深さを後悔し、プロスペローの座を狙ったキャリバンの策も失敗する。
ミランダとナポリの王子ファーディナンドは恋に落ち、総ての人は皆の無事を知り涙する。

全ての人々の後悔をみたプロスペローは、再び自分がミラノ君主となることを誓わせて、魔法の杖や本を海に投げ捨て囚われの身だった風の妖精エアリエルを約束通り自由の身にするのだった。

シェークスピアの物語は、理不尽な怒りに満ちているモノが多いように思う。
どうすることも出来ない出来事や、不可思議な力の及ぼす不思議な出来事で満ちている。
でも、何故かどの作品も、内側にあるように思う人間への信頼と優しさは、作品の深みとして表れて、見るものに感慨深いものを残す。

(J)

「テンペスト」 THE TEMPEST