2014年 カナダ・フランス合作

1973年
スウェーデン・ストックホルムで、銀行に強盗が入り、4人の人が5日間監禁された。
極度の恐怖と不安の中、監禁された人々は犯人対して、過度の連帯感や行為を抱くようになり、犯人逮捕時に犯人への同情や愛情を示したり、
協力する態度・行動を取ったという。
この事件以降、そのような現象をストックホルム・シンドロームと言うようになる。

トムは、恋人のギョームを亡くす。
打ちひしがれ何も感じず、泣くことも出来ない状態だった。

ギョームの葬式に出席するために、彼の故郷へ車で来たトムだったが、ギョームの母アガッタは、サラと言う恋人は来るのかとトムに聞く。
ギョームは母親のアガッタにトムの存在を知らせていなかったようだった。

ギョームの兄・フランシスは、トムとギョームの関係を知っており、その事を母には隠すようにと強要する。
ギョームの友人として葬式に参列することになったトムだが、フランシスはトムに葬式でギョームを送る言葉を言うように命令する。

フランシスに反発し、怒りを持ちながらも、彼の暴力的な振る舞いはトムを脅かす。
葬式でトムはどうしても話ができず、そのことでフランシスに殴られて、償いが終わるまで帰ってはいけないと言われる。

翌日から、トムはギョームの家の手伝いをする。
農場を営むフランシスは、トムに様々な事を命令する。
家畜に世話、トウモロコシ畑の作業、逃げようとするトムをフランシスは殴る。

農場を去ろうとすると自分の車はない。
どうすることも出来ないトムだった。

首を絞め、殴るフランシスにトムは抵抗しなくなっていく。

医者に罹り傷の手当てをするトムに、フランシスは妙にやさしかったりする。
フランシスの暴力はどんどんエスカレートする。
が、一方で将来の夢を語りトムに共に働こうと誘う。

やがて混乱の中、トムはフランシスの中にギョームの面影を見るようになる。

ストックホルム・シンドロームを描くこの映画は、恐怖で身動きできなくなればなるほど、心は自分の無力感を拒否する様子が描かれている。

『自分はどうせ駄目な人間なんだ。』と言うトムは、自分に自信がなく、どこかで何かを投げ出していた。
そんな彼が、暴力に身をさらすとき、相手に好意を抱くことで自分を守ろうとする。
『自分だって何かの役に立つんだ』と…。

町の酒場で、〝フランシスは立ち入り禁止”になっていることを聞いたトムは、バーテンダーに事情を聞く。
語られた話は、フランシスの暴力の凄まじさを知ることに繋がる。
そしてトムは自分の置かれている立場を理解し、そして彼は…。

(J)

「トム・アット・ザ・ファーム」