若竹 七海(わかたけ・ななみ)
1963年、東京生まれ。
立教大学文学部卒。
1991年、「ぼくのミステリーな日常」で作家デビュー。
2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞〈短編部門〉を受賞。
2015年、「さよならの手口」でミステリファンクラブ・SRの会による〈SRアワード2014〉国内部門を受賞。
同書は、各種ミステリ・ベストテンにもランクインした。
日常の生活に潜む人間の悪意に対するかわいた視線を持ちながら、決して重苦しくならない洒落たセンスがその作品空間には常に漂っている。
著書に「心のなかの冷たい何か」「飛天風神」「プレゼント」「海神の晩餐」「スクランブル」「遺品」「悪いうさぎ」「名探偵は密航中」「古書店アゼリアの死体」「御子柴くんの甘味と捜査」などがある。

探偵としての腕はまずまずと思っている葉村晶は、同年代の会社員よりずっと稼いできた。
葉村は、40代だ。
無趣味で友人もほとんどなく、ペットも飼っていないし、男とも縁がない。
現在は調布市内の農家の離れを利用したシェアーハウスに、光熱費込み七万円で暮らしている。
務めていた長谷川探偵調査所は、半年前に閉鎖された。

探偵家業は結構疲れる。
しばらく探偵は休業し、いい機会だから数カ月はぶらぶらしていようと思っていた。
ところが、富山泰之に出会い、吉祥寺の住宅街にあるミステリーを専門に扱う本屋でバイトすることになる。

古本の引き取りで、古い平屋の遺品整理に出かけた。
葉村は、古家に籠るカビ臭い匂いや積もってくる疲労がストレスになりながらも、押し入れに目当てのミステリーがあるのを見つける。
押し入れを必死にのぞき込んでいるときに、白い犬が家の中に入り込みきゃんきゃんと狂ったように吠えた。
次の瞬間、押し入れの床が、轟音と主に崩れ去った。
押し入れの床下には基礎などなく、水たまりがあった。
その水たまりの中から人間の頭蓋骨が出てきた。

頭蓋骨を発見した葉村のもとに、二十年前に家出した、娘の安否を調査して欲しいという依頼が来る。
依頼人は、元女優の芦原吹雪で今は末期がんで療養中だ。
彼女のシングルマザーの子どもとして生まれた娘・志緒利は、お見合い当日、大きな黄色いスーツケースと共に、行方が分からなっていた。
かつて娘の行方を捜していた探偵は失踪している。

葉村は、ボロボロの体を引きずりながら、行方不明の志緒利を探す。
探偵業には、半年のブランクがある。
この仕事が好きだと思いながらも、探偵として以前のように働くことがあできるのだろうかという不安もあった。
彼女は、依頼された娘を見つけ出すことができるのだろうか。
さまざまなミステリーが組み合わされた、盛り沢山な内容のミステリ小説。
これで終わりと思いきや、次のさらなる展開へと突き進む。
そんな終わりなきようでいて、重なる展開を楽しめる内容の作品だった。

(J)

 

 

「さよならの手口」