東野 圭吾 (ひがしの けいご)
1958年、大阪府生まれ。
大阪府立大学電気工学科卒業後、生産エンジニアとして会社に勤める傍ら、ミステリーを執筆。
’85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。
’99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。
近著に『さまよう刀』『黒笑小説』などがある。

某国立大学工学部を卒業した前島は、某電機メーカーに就職した。
地元の研究所に配属されて、まずまず希望通りだっかが4年目に東北の新会社への配属替えに伴い、私立精華女子高等学校の教師になる。
やりたい仕事でもないが嫌うほどでもない教師の仕事は、年老いた母親が熱心に進めた。
その教師になって五年目になった。

9月10日、火曜日の放課後、校舎の側を歩いていたとき、3階の窓から何か黒いものが放り出された。
あわてて身をよける。
それはゼラニウムの鉢植えだった。
一瞬何が起こったのか理解できず、しばらく呆然と鉢を眺めていた。

殺意に気づいたのは三日前の朝だった。
場所は、S駅のプラットホーム。
満員電車からは、多くの群衆が吐き出され、流されるようにホームの端を歩いていた時、ふいに横から突かれた。
突然のことでバランスを失い体制を整えたところに急行列車が通過していった。
危なかった。
あと10センチもなかった。
心が凍った。
誰かが故意に付いたことを確信した。

二度目の殺意を感じたのは昨日だった。
泳ぐのが好きなので、水泳部の練習が休みだったので、プールで一人で泳いでいた。
アーチェリー部のコーチをするのであまり疲れることができない。
焼けついたプールサイドで整理体操をした後、シャワーを浴びた。
洗い終わって水を止めた時、足元から1メートルほど離れたところに落ちていた白い小箱があった。
百ボトルの家庭用の延長コードの先端だった。
シャワー室から飛び出した。
プールに入る前にはこんなものはなかった。
感電死を狙ったが、ブレーカーが落ちて助かったのだった。
でも、誰が、なぜ?

その後、校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んだ。
密室での事件だった。
第一発見者は前島だった。
そして、その後も校内で青酸中毒による教師殺害が起こる。

密室の緻密な計画、そして犯行。
調べれば調べるほど謎は深まる。
犯人は誰か?何が目的なのか?
その謎に刑事も前島も迫る。
スリルとサスペンス。
そして意外とも思える最終章への展開は、多くの伏線に彩られて、謎ときを面白くさせる。
そんな作品だった。

(J)

 

 

「放課後」