水谷 英夫 (みずたに・ひでお)
1973年東北大学法学部卒・弁護士(仙台弁護士会所属)
主要著書:『夫婦法の世界』、R.ドゥオーキン著『ライフズ・ドミニオン―中絶と尊厳死そして個人の自由』、『セクシャル・ハラスメントの実態と法理』、『弁護福祉職―働き方のルール』』、『労働の法』、『ジェンダーと雇用の法ⅠDV・セクハラ・ストーカー』、『職場のいじめ・パワハラと法対策』、『職場のいじめとパワハラ・リストラQA150』、『実践・労働相談入門』、『感情労働と法』、『ケーススタディ労働法―身近な労働相談』

「感情労働」あるいは『感情管理労働」という言葉は、聞きなれない言葉かもしれない。
しかし今、私たちは、仕事をする環境変化の中で、日常的に絶えず感情をコントロールしながら生活をするようになってきている

最近、職場では「働きがい」や「ストレス」が話題になることが多く、「自分の職場は何を大切にし、どこを目指しているのかわからない」「叱られも褒められもしないので自分が必要とされているのかわからない」「このままでは働き続ける自信がない」などの声がたくさん聞かれます。シフト勤務で同僚と会うことがなく、非正規職員が増加し、業務量が多すぎて会話する時間がないなど、さまざまな原因が考えられますが、その問題の1つが「職場のコミュニケーション不足」にあることは、多くの人が認めるところとなっています。今日、職場においてコミュニケーションが占める役割と比重は、過去と比べて比較にならないほど大きくかつ広範なものになってきています。
本文 抜粋

主に身体(肉体)労働が主たる労働、すなわち「人vs物」が支配的な労働形態であった近代社会の当初から、IT/技術革新の進展とともに女性労働者の職場進出が促進され、産業構造のサービス化に伴い、医療、ケア、教育、デイサービスなど顧客サービスが増加した。
頭脳/知識と結びついた労働「人vs人」が、職場の中心になるにつれて、職場の技術的なスキルだけでなく、不適切な感情の吐露(パワハラやいじめ)によるストレスからメンタルヘルス不全になる人が増加に世界的な問題となっている。
アメリカ発のグローバリゼーションが、世界中に広まり、「労働の商品化」が進んだ。
物の製造・販売だけでなく人間を相手とするコミュニケーション労働の重要性が飛躍的伸び、それ以外の現象と相まって、職場での生きがいや働きがいを失わせる要因となっている。
また、「人vs人」労働は、感情労働の広がりをみせて、その成果や効果は、労働の量と直接的な関りを持たないので、サービス提供者が保証されにくいという。

ディーセント・ワークは、自らが人間としての尊厳や良好な労務の提供が確保・保証されていていて、職場においても安心して活動することを可能にするという。
「内部環境」を「安全基地」とすることにより、職場の機能をより人間中心に変えようとする。
良好な内部環境整備は、感情労働には必要不可欠であり、ひいては豊かなコミュニケーションへとつながっていく。

職場でのゆとりある生活を実践し、「心の病」への適切な対応を望む。

(J)

「感情労働とは何か」