アンデシュ・ハンセン Anders Hansen
1974年生まれ。
スウェーデン・ストックホルム出身。
前作『一流の頭脳』が人口1000万人のスウェーデンで60万部の大ベストセラーとなり、世界的人気を得た精神科医。
名門カロリンカス医科大学で医学を学び、ストックホルム商科大学でMBA(経済学修士)を取得。
訳者 久山葉子(くやまようこ)
1975年兵庫県生まれ。
翻訳家。エッセイスト。
神戸女学院大学英文科卒。
スウェーデン大使館商務部勤務を経て、現在はスウェーデン在住。

 

《うちでは、子供たちにがデジタル機器を使う時間を制限している。-スティーブ・ジョブズ(アップル社創始者)》
本文 抜粋

『スウェーデン人とインターネット』は、2017年10月、ここ20年間のインターネット使用習慣を過去最大規模で調べたものだ。
結論は、人々はスマホに取り憑かれているというというものだった。
その上、月齢12カ月までの乳児ですら、4人に一人がインターネットを使い、2歳児は半数以上がインターネットを毎日使っているという。
平均一日四時間、若者の二割は、七時間もスマホを使う。
IT業界のトップは、我が子にデジタル・デバイスをあたえないという。

スマホが脳に与える影響はどんなものがあるのだろうか。
SNSの脳の報酬中枢を煽る仕組みがあり、片時もスマホが手放せなくなる依存症のような状態、不眠からくる精神の不調や学力の低下、マルチタスクで同時に複数のことをすることによる集中力の低下、短期記憶の低下や長期記憶への影響、SNSの使用による孤独感や自信・自尊心の低下、フェイクニュースの広まり、報酬を我慢できなくなる、鬱、強いストレス状態などである。

コロナ時代の今、スマホは外界とのライフラインにもなっている。
しかし、ここ10年間に起きた行動様式・ライフスタイルの変化は、人類史上最速のものである。
人間が地球上に現われて99.9%の時間を、狩猟と採取をして暮らしてきた。
人間の脳は、デジタル社会に適応していない。
それが、重要な鍵になる。

現在のデジタル化は、「ほんの始まり」に過ぎない。
テクノロジーで退化しないために、適度の運動や、スマホの使用時間を決めて人と関わる時間を作ることは、人間の脳や、今現れているスマホの脳に与える影響を最小にして、なおかつ最適なものにする可能性を多いに孕んでいるという。

筆者は、人間の脳が狩猟・採取時代のものだからと言って、その時代のように暮らせと言っているのではない。
スマホの脳に与える影響をよく考えて、自身をコントロールする必要性を解く。
スマホに使われるのではなく、スマホを使う必要がある。

(J)

「スマホ脳」