川村 元気(かわむら・げんき)
1979年横浜生まれ。
上智大学文学部新聞科卒。
「電車男」「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」「君の名は。」「怒り」などの映画を製作。
11年、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。
12年『世界から猫が消えたら』で作家デビュー。
140万部の大ベストセラーとなり、映画化される。
他著に『四月になれば彼女は』、対話集『仕事。』『理系に学ぶ』など。
「人生に必要なのもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ」。
映画『ライムライト』のシーンで言われる言葉だ。
主人公を演じたチャップリンは、このセリフを書く前に年間六十七万ドル(約9億円)の契約金を手にしていたという。
2年前の大晦日に一男の弟は、妻と二人の子どもを残して突然消えた。
その上、弟は、三千万円の借金をしており、一男はその肩代わりをしなければならなくなった。
お金の問題は、家族のバランスを大きく崩し、半年後、妻・万佐子は、一人娘のまどかを連れて家を出た。
一男は、借金返済のために昼は図書館司書として働き、夜はパン工場のベルトコンベアの前に立ち働く。
「貨幣とは、奴隷制度の新しい形だ」(トルストイ)。
そんな一男が、宝くじで3億円を当てた。
3億円もあれば、借金の返済もできるし、幸せな元の家族に戻れる。
だが、ネットでは、お金を手に入れた人たちの不幸な話で溢れていた。
一男は、お金の使い方を教えてもらうために、「お金と幸せの答えを求めた」大学時代の親友であり、今や大富豪となった九十九を訪ねることにした。
だが、その九十九が、どんちゃん騒ぎの果てに、3億円と共に失踪してしまう。
一男は、彼の行方を捜して、九十九のかつての同僚で、共に大富豪でもある十和子・百瀬・千住たちから話を聞くこととなる。
十和子は、夫との愛を守るために、お金を自宅の壁に隠す。
百瀬は、競馬でさらに儲けを増やしていた。
千住は、「ミリオネア・ニューワールド」という億万長者セミナーを開催し、「お金と幸せの答え」を多くの人に伝えながら、さらに儲けていた。
「世間は、金持ちを尊重し、偉人と認識する」(アダム・スミス)
「お金は、世界に君臨する神である」(トマス・フラー)
お金で買えないものが3つある、という。
一男は、いろいろな人たちから、お金の使い方を学んでいくことになるが…。
無いと困るし、在りすぎても困る?
そんなお金に纏わる出来事を探る物語でもある。
一人娘と妻をこよなく愛し、ただ家族の幸せを求める一男に、幸せは来るのだろうか。
《幸せとは何か》興味深い本でもあった。
(J)