朱野 帰子 Akeno Kaeruko

東京都生れ。
2009(平成21)年、『マタタビ潔子の猫魂』で第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞。
’13年、『駅物語』がヒット。
’15年、『海に降る』が連続ドラマ化される。
生き生きとした人物造形と、緻密でありながらダイナミックなストーリー展開で注目を集める。
他の著書に『真壁家の相続』『超聴覚者 七川小春 真実への潜入』『賢者の石、売ります』『対岸の家事』『会社を綴る人』などがある。

東山結衣は、定時に会社を出ることを決めている。
定時に帰ると、会社から5分ほどのところにある雑居ビルの地下にある上海飯店で、18時半までやっているハッピーアワーの中ジョッキが半額になる。
今日も、結衣が「皆勤賞女」と呼んでいる三谷佳菜子は、結衣が定時で帰るのを止めにかかっている。
この秋から結衣が教育係になっている新人の来栖も定時に帰している。
来栖は、有給休暇も確実に消化している。
三谷は、結衣が定時に帰ることや、来栖が有給休暇や定時帰宅も気に入らないらしい。
彼女は、風邪をひいても休まない。
熱があつても出社する。
結衣への社内の風当たりは、決して緩くはない。
だが、結衣は定時に帰ることを自分で決めている。

結衣の父親は、昭和の仕事人間だった。
家にいて欲しいと思っと時もあったが、やはり父は仕事をしていた。
元婚約者の種田晃太郎もそうだった。
晃太郎は、結衣との結婚よりも仕事を選んだ。
巧と付き合う前、結衣は別れたばかりの晃太郎の悪口をさんざん言った。
巧は、黙って聞いてくれた。
一緒にいてほしいと望めば、巧は仕事を切り上げてでも会いに来てくれた。

そんな結衣が、マネージャーになった。
『それでも定時に帰ります。』と宣言した結衣だったが…。
無茶な仕事で部下を潰すという噂の上司の登場で、結衣の「定時の帰宅」は、どういうことになるのだろう。

働き方に悩む人へ、お勧めの本の一冊だ。
自分の生き方を貫くことは、状況によってはとても難しい。
悩みながら生き抜く結衣の新しいお仕事小説は、働き方に悩む人へ何がしらの参考になるかもしれないと思う。

(J)

「わたし、定時で帰ります。」