東野 圭吾 ひがしの・けいご
1958年大阪市生まれ。
大阪府立大学電気工学科卒業。
85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞、99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞と第6回本格ミステリ大賞、12年『ナミヤ雑貨店の奇跡』で第7回中央公論文芸賞、13年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。
『白夜行』『幻夜』『分身』『怪笑小説』『黒笑小説』『歪笑小説』『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』ほか著作多数。

東京・練馬のマンションの一室で、女性の死体が発見された。
解剖による死因は、感電死によるもので、被害者は妊娠していた。
該当のマンションでの聞き込みで、被害者宅に出入りする同一の男性を、複数の人物が目撃していた。
そこへ、新たな情報として警視庁に一通の手紙が届く。
密告状であった。
密告状には、犯人は、12月31日にホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティ会場に現れるという内容だった。
密告状は、いたずらの可能性もあったが、内容からいっても放ってはおけないものだった。

数年前に都内で起きた連続殺人事件の際、ホテルコルテシア東京で次の殺人が起きる可能性が高いと判明した警視庁は、何人かの捜査官をホテルの従業員として潜入させたという作戦をとった。
その時、フロントクラークに化けて潜入したのが新田浩介だった。
英会話が堪能で見た目が上品というのがその理由だった。

そして、今回も新田は、ホテルクラークとしてホテル・コルテシア東京に潜入することになった。
だが、今回は12月31日の大みそかに行われるカウントダウン・パーティーだ。
しかも、ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティーは、仮装パーティーだという。
顔にマスクをつけるので、誰が誰だがわからない状況から、犯人を捜しださなければならない。
犯人が特定でない状況での侵入捜査で、また殺人事件が起きる可能性もあった。

ホテル・コルテシア東京のコンセルジュの抜擢されている山岸尚美は、お客様の対応に追われていた。
密告状の犯人が現れると告げる12月31日は、年越しをホテルで過ごそうとするお客様で賑わうときでもあった。
華麗な仮面舞踏会が迫るなか、顔すらわからない犯人をどう捕まえるか。
スリルとサスペンス、甘いロマンスの香りを漂わせながら、物語は大きな山場へと向かう。

疑えば疑うほど誰もが怪しく映る。
そんな人々の中、新田や山岸の推理が光る。
前作同様、本を読む時間は、速く、面白いように流れる。
さて、警視庁の侵入捜査官たちは、どのようにして犯人を見つけ捕まえるのだろう。
興味津々で、先へ先へと読み急ぐ物語であった。

(J)

「マスカレード・ナイト」