三好 徹 みよし とおる
1931年東京生まれ。
本名は河上雄三。
旧制横浜高商(現横浜国立大)卒。
読売新聞社記者のかたわら小説を発発達の表。
1968年、『聖少女』で第58回直木賞受賞。
ミステリー、歴史小説、現代小説、ノンフィクションなど幅広い分野で活躍。
主な著書に「風塵地帯」「天馬の如く」「興亡と夢」「幸運な志士—若き日の元勲たち」「高杉晋作」「沖田総司—六月は真紅の薔薇」「板垣退助—孤雲去りて」「徳川慶喜」など多数。

「人斬り半次郎」の異名をとる中村半次郎。
彼の剣は、薩摩の剣・示現流であり、幕末、そして維新へとその名を馳せる。
西郷隆盛の人柄に惹かれて、金や権利や名誉にも興味を見せず、ただ、己の生き方を貫いた半次郎こと、後の桐野利秋の人生の物語である。

中村半次郎は、薩摩藩の吉野郷の郷士であった。
薩摩藩では、西郷隆盛のような城下士と半次郎のような郷士との間には、身分の上下の線が引かれており、郷士は城下士から人間扱いされることはなかった。
そんな半次郎に、西郷は丁寧に接し、その西郷の人柄に惹かれた半次郎は、その後の人生を西郷とともに過ごすことになる。

王政復古を目指した西郷に従い、薩摩藩・長州藩・土佐藩の新政府軍と共に、戊辰戦争などでも活躍する。
維新後、陸軍少将になるが、その後薩摩へと帰り、土地を耕し、田んぼや畑を作り、現在でもその農耕地は現存するという。
また、鹿児島では、西郷らと新学校を作り、仕事を失くした武士などの支援をしたとされる。
が、その新学校が基とされる西南戦争で政府軍に負け、その一生を終わる。

歴史上は、西郷隆盛と共に生きた藩士と言われているが、その人生の記録はほとんどないという。
どんな生き方をしたどんな人物だったんだろうか、それもまた、謎のままだという。
読み書きができなかったとか、博学ではなかったとか、女性には優しく、非常に人気のなる人物だったとか、いろいろと言われてるが、真実はわからず、人によっては、かなりの博学で、自分の意見や生き方をしっかりと持っていたともいわれている。

日本の内乱である、江戸幕府から、新政府へと変わっていく時、身分の上下を超えた様々な活躍があり、その動きに従って時代は変化していった。。
桐野利秋もそんな幕末・維新の人物に一人として、その人生を駆け抜けていったのだろう。
この人のために思う人のために、義を重んじ、人生を駆けた一人の男の物語である。

(J)

「桐野利秋」 青雲を行く