東野 圭吾 (ひがしの けいご)
1958年、大阪府生まれ。
大阪府府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。
’85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。
’9年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの貢献』で第134回直木賞を受賞。
著書に『夜明けの街で』『流星の絆』などがある。

湯原一彰は、胸のポケットから、IDカードを取り出し、守衛の方に差し出した。
妻・篤子が助手席から居心地悪そうに座っている。
後部座席には、息子の高彦がいる。
今日は、湯原が仕事で、5年以上のかかった超大型特殊ヘリコプターの公開日だ。
防衛省・関係者の人たちに、ヘリコプターの完成をお披露目するのだ。
そして、そのヘリコプターを、妻や息子に見せる予定だった。

同僚の山下の妻・真知子や恵太を伴って来た。
妻や子どもたちは、公開の時間まで厚生センターにいる予定だった。
時間を持て余した子どもたちは、試験飛行場の境界の第三格納庫の近くまで行く。
そして、自分たちの父親の仕事を一目見ようとする。
二人は、好奇心から格納庫の中に入る。
そして、そこに置いてある超大型ヘリコプターに驚きと歓声を上げる。
そして、タラップで中に入る。
高彦は、タラップを降りて、外に出たが、恵太はまだ中にいた。
その時だった。
突然、ヘリコプターが動き出した。
高彦は慌てて恵太を外に出るように促すが、間に合わない。
ヘリコプターは、格納庫から出て行く。
そして、見る見る間に空へと飛び去って行った。

一人の小学生を乗せた大型ヘリコプターは、無人操縦で飛行する。
そして、敦賀の高速増殖炉原型炉『新陽』の上で、ホバリングしている。

やがて、各関係機関へファックスが送られてくる。
犯人からだ。
ファックスには次の要求が書かれていた。
【『新陽』にヘリコプターを墜落させたくないなら、現在稼働中、点検中の原発を使用不能にすること。
また、建設中の原発の建設中止を要求し、それらの作業を全国ネットでテレビ中継することを要求する。】
警察や原発関係者、ヘリコプターの関係者、そして防衛庁など、ありとあらゆる人々が動き出す。
近隣住民は、放射能を恐れ、できるだけ遠くへ行こうとする。
犯人捜しに奔走する警察関係者や、事件の事情から社内犯行説が浮上し、事情聴取が行われる。

ヘリコプターから、恵太は無事に助け出すことはできるのか。
墜落したとき、政府の説明通り、放射能漏れは起きないのか。
噂はうわさを生み、人々はそれぞれの思惑で動く。

名探偵が登場するわけでもなく、特別な才能のある人が出てくるわけでもない。
多くの人々が、自分の仕事をこなしていく中、点が線になり、線が面になる。
その積み重ねられていく様子が、見事に描かれる。
興味深い、警告のしての犯行?とも思われる犯人の動きは、最後に意外とも思える展開を見せる。

面白かった!!
(J)

「天空の蜂」