精神分析  Psychoanalysis

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フロイド(Freud,S.)によって創始された心理療法の技法および人格理論である。フロイドは19世紀後半に医師として訓練を受け、ヒステリーの治療に当たる。自由連想を中心とした技法を次第に開発し、その成功により心理療法を確立していく。創設期から1920年頃までに無意識に存在する衝動を明確化し、抑圧に関する考えを中心に理論が展開される。その後心的世界の理解が洞察されて、自我・超自我・エスの三層構造としてとらえる考え方をする。防衛機制、精神病理や症状の形成、治療的かかわりレベルでの分析(転移分析)が理論化されて、理論体系と治療理論が確立していった。
理論と技法の次の展開は1930年以降から試みられるようになり、神経症以外の病理や症状、つまり精神病や人格障害・児童にたいする精神分析的な取り組みや一般の不適応や芸術家など創造的な人々への精神分析的な貢献があげられる。人生早期の親子の人間関係を中心として人間関係論に重点が置かれて、クライン(Klein,M.)らの対象関係論が理論的に展開されるようになった。このように内的衝動性や無意識的な葛藤や罪悪感に病理の起源を求めるところから対人関係や対象関係の歪みの発見に重点が置かれるようになった.ryouhou3_2

アンナOの症例
O.アンナは、21歳の未婚女性で、知能も高く、非常に優れた詩・文学的な創造力を有していた。病父の看護中、アンナは欠神と昏睡状態、錯語等の症状を示した。
アンナは、激しい渇きを覚えながら、コップを口に当てることができず、そのため水を飲むことができなかった。彼女に催眠をかけて話を聞くと、彼女があまり好きでなかった婦人の部屋で、その夫人の子犬がコップに口をつけて水を飲んでいるのを見てしまった。彼女は激しい嫌悪感を感じながらも礼を失せぬように、このことについては何事も言わなかった。そしてその時から彼女の水を飲めぬ症状が始まっていることが分かった。催眠状態の中で抑制することなく、以上の体験について語り、抑えていた情動を発散してしまうと、コップに口を当てたまま催眠から覚め、何の抵抗も無くその水を飲むという劇的な解決をみせた。
精神活動における自我の中心的役割を強調し、心的現象や心的機能を自我との関係から理解しようとする心理学である。その中でもとくに、フロイト(Freud,S)が定義した自我の概念を基礎とする立場を、精神分析的自我心理学とよぶ。
フロイトの自我の役割を重視する立場を受け継いだのが、アンナ・フロイト(Freud,A)、ハルトマン(Hartman,H)といった人たちである。
アンナ・フロイトは、精神分析における自我の分析の意義を重視した。そして自我のはたらきは、自我の防衛活動として顕著に現われるという立場から、とくに児童の精神分析を通して自我防衛を研究し、発達の観点も取り入れたうえで、自我防衛とその発達を体系化した。ハルトマンは、自我の機能には、欲動と外界との葛藤から生じる不安に対する防衛機能だけではなく、葛藤から離れた、葛藤の影響を受けない側面があることを指摘した。それを葛藤外自我領域と名づけた。葛藤外自我領域には、知覚、思考、記憶、言語の使用、身体の運動という活動が含まれる。

ryouhou3_4対象関係学派
イギリスの対象関係論的な基本的視点を強調した学派名である。
フロイト(Freud,S)は、生物学的な成熟過程を基本的視点にしている本能論、経済論などを展開している。クライン(Klein,M)は、フロイトの「生と死の本能論」を継承しながら、個人の無意識の世界の記述に関しては「妄想分裂ポジション」、「抑うつポジション」などの早期対象関係論の視点を発展させた。それに啓発を受けたウィニコット(Winnicott,D.W.)やフェアバーン(Fairbairn,W)、バリント(Balint,M),ガントリップ(Guntrip,H)などは、「生と死の本能論」を批判し、母親対象と乳幼児の満足と欲求不満の視点から、独自の理論展開を行った。対象関係論学派は、クライン派を含める場合もあるが、狭義には後者をさすことが多く、独立学派とも呼ばれる。
それらは共通して、乳幼児と母親との関係性が、心の発達に大きな影響を与え、対象希求や依存の観点や取り入れや投影を中心にした理論展開を行っている。ryouhou3_3

心理療法3