2013年 イギリス制作

ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門
監督賞 他3部門 受賞作品

ロンドン市ケニントン地区の民生係の仕事をするジョン・メイは、きちんと仕事をこなす人だ。
彼の仕事は、孤独死した人のお見送りや、その関係者と連絡したりすること。

亡くなった人の写真や資料を基に、彼は様々な事をこなす。
送辞も書き音楽も選ぶ。
墓地に埋葬し仕事は終わる。

きちんとした仕事をしようとすると時間がかかる。
そんな彼の仕事のやり方に不満を持つ上司は、彼に解雇通知をする。
20年間きちんと仕事をこなしてきたジョンだが、この解雇通告で、お見送りの仕事はもうできない。

そんな彼の元に最後の仕事が舞い込む。
ジョンの住むアパートの向かいの部屋で、ビリー・ストークという老人が死ぬ。
アルコールに溺れ、孤独に死んだ人のようだ。

いつものように管理者と共に部屋に入る。
片づけの支持をし、故人の写真や身内の資料を探す。
探し当てた写真のアルバムから、ビリーにはどうやら娘がいるらしいということがわかる。

ジョンの生活は決まりきったものだった。
仕事をして家に帰って食事。
決まったものを食べて、またいつものように時間には仕事場に行く。

この仕事は、ジョンにとっては最後の仕事。

ビリーの過去を調べ、友人や配偶者や子供を探す。
そして、ビリーの元妻や子どもや、また友人たちから自由奔放なビリーの生き方を聞く。
周りの人に散々迷惑ををかけながらも、愛されたビリーの話を…。

その話を聞きながら、ジョンの心に微妙な変化が生まれる。

今まで飲んだことのないココアを飲み、食べたことのないものを食べる。
ビリーがおぼれたお酒も飲む。
経験したこともないことをしてみる。

ジョンにはきちんとしたお見送りの作法があった。
故人の死を悼み、心から葬儀をする。
『葬式は誰のためにやるんだ?』『時間を節約しろ』という上司に、彼は逆らいはしなかったが、最後まで自分のやり方を貫こうとする。

映画を見ていて、心がふわっと暖かくなる。
そして、心が軽くなる気持ちの良い映画だ。

どうってことのない日常的な風景の中に、人への信頼が心に響く。
選び抜かれた心使いが、見る人に温かい贈り物になる。
そんな作品だった。

(J)

「おみおくりの作法」