コルソン・ホワイトヘッド
1969年生まれ。
ハーバード大学卒業後、ヴィレッジ・ヴォイス紙で働く。
1999年に第1長編 The Intuitionist を発表。
2016年に刊行された第6長編にあたる本書は、ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞など7つの文学賞を受賞し、多数の有力紙誌の年間ベスト・ブックに選出。
バリー・ジェンキンス監督による映像化が決定している。
2019年に発表した第7長編『ニッケル・ボーイズ』で再びピュリッツァー賞を受賞し、同賞を2度受賞した史上4人目の作家となった。
ニューヨーク在住。

アメリカの19世紀、特に南部では奴隷で働く人々は、過酷な生活を送っていた。
コーラの祖母・アジャリ―は、幾度の転売されて、最後に行き着いた所は、南部のジョージアのランドル農園だった。コーラは、この農園で生まれた。
ここの生活しか知らなかったが、それでもその過酷さはわかっていた。

同じ農園で働く新入り少年シーザーから逃亡の話を持ちかけられる。
初めは、聞く耳を持たなかったコーラだが、農園での凄まじい生活から逃げたいと思うようになり、逃亡を決意する。

「地下鉄道」は、奴隷解放のツールだった。
フレッチャーは、奴隷制度を神への公然たる侮辱だと忌み嫌っていた。
その彼が、シーザーとコーラを逃亡を助けてくれた。
見つかれば命はない。
ぎりぎりの逃亡の中、地下鉄道の着いた先はサウス・カロライナだった。

サウス・カロライナの生活は、コーラが今まで経験したこともないものだった。
きちんとした服装や食事を与えられ、読み書きを教えられた。
だが、その幸せもつかの間のものになる。

奴隷狩り人リッジウェイは、残忍な性格だった。
彼らの逃亡を必要に追いかける。
奴隷一人のかけられる賞金は、30ドル程度だ。
農場主テランド・ランドルは、強い執着心でコーラを追いかけるように命令した。

「地下鉄道」は、実在しない鉄道だ。
だが、当時の黒人の間で逃亡物語の象徴のように使われていたともいう。
黒人は人としては扱われず、生産を促進する道具として売り買いされた。
悲しい史実である。

(J)

「地下鉄道」 THE UNDERGROUND RAILROAD