盛田 隆二 (もりた りゅうじ)
1954年、東京生まれ。
八十五年「夜よりも長い夢」で早稲田文学新人賞入選。
九十年『ストリート・チルドレン』が野間文芸新人賞候補に。
九十二年には「サウダージ」が三島由紀夫賞候補となる。
著書は他に『ラスト・ワルツ』『金曜日にきみは行かない』『東京小説』などがある。

涌井祐里子は、1998年9月1日に、夫の涌井耕治の手で、「失踪申告申立書」が提出された。
「失踪申告申立書」が受理されると、涌井祐里子は、戸籍上死んだことになる。
祐里子が失踪してから七年以上も経過し、帰来する見込みがないことから、この申し立てが札幌家庭裁判所に提出された。
1991年3月1日、祐里子は一人で失踪したのではないことを耕治も知っていた。
正午すぎに電話にでた妻は返事もせずに即座に切った。
その対応に夫も満足し、祐里子も確かにうなずいたように思った。
夕刻に妻は買い物に出かけたまま、二度と戻らなかった。

1990年3月、北大のキャンパスには俊介がマフラーに顔を埋め、両手で体を抱きしめるように南へ向かう。
セイコーマートで、俊介は、夜の時間、アルバイトをしていた。
当時、祐介は賀恵にふられて彼女のことばかり考えてる日々だった。

そのアルバイト先の店に来る客で、いつもM&Mを万引きする女性がいた。
俊介は、祈るような気持ちで、『手を出さないでくれ』と思う。
が、いつも彼女は手を出した。
それも正々堂々とした態度だった。
ある日、いつもとは違うラーメン屋に行くと、そこに居たのは、例のM&Mの彼女だった。
彼女は、祐里子と呼ばれていた。
そして店には、祐里子の夫と姑、そして彼女の息子で中学3年になる正太がいた。
そして俊介は、ひょんなことから正太の家庭教師を引き受けることになる。

4月に入ると、大学のキャンパスはスーツ姿の学生が目立つようになる。
俊介は、希望の北海道新報社への内定が決まった。
が、俊介の心は、次第に祐里子への思いが募り、気持ちは、どうにもならに位に深まっていく。
取り返しがつかないことになると、重々承知しながらも、彼は自身の気持ちを、どうすることもできなくなっていく。

12歳、年の離れた子持ちの祐里子と、大学生で前途悠々とも思える俊介の、抜き差しならない恋愛を、情念というか熱愛というか、どうにもならない深みにはまっていく二人の生き様を描く。
一度、踏み外すと元に戻れない。
とことんまで、それこそ、夜の果てまで、流れていく祐里子と俊介の物語である。
興味津々でとことんまで読ませる文章だ。
祐里子・俊介じゃないけど、読んいでるこちらまで、深みにはまってしまいそうな、そんな本だった。

(J)

「夜の果てまで」