今野 浩 Konno Hiroshi

1940(昭和15)年、生まれ。
東京大学工学部応用物理学科卒業。、スタンフォード大学大学院オペレーションズ・リサーチ学科博士課程修了。
Ph.D.工学博士。
筑波大学助教授、東京工学大学教授、中央大学教授等を経て、現在東京工業大学名誉教授。
著書に『すべて僕に任せてください―東工大モーレツ天才助教授の悲劇』『工学部ヒラノ教授』『工学部ヒラノ教授と4人の秘書たち』『工学部ヒラノ教授と7人の天才』『工学部ヒラノ教授のアメリカ武者修行』など。

一日12時間労働で休みなし。
果てることのない会議。
雑用の山、書類の山、安月給、専門対一般教養の格差など、実話をもとに書かれた国立大学の教授、助教授の日常は、とんでもなく忙しい。
土曜日、日曜日返上での研究生活は、読んでいて、その忙しさに、おもわず、ため息が出そうになる。
『大変だな~、大学の先生たち!!』

その上、朝令暮改の文科省に翻弄され、会議と書類の山の中に埋もれながらも研究研究の日々が続く。
本来の理想では、研究40 教育30 雑務15 社会的貢献15
でいきたいところが、現実は、研究25 教育45 雑務20 社会的貢献10なのだそうだ。
大学によって、また、学部によっても様々なようだが、ヒラノ教授の務めた、筑波大、東京工学大、などはこの数字に近い?ようである。

研究者としては、研究をしないと将来はない。
必然的に、土曜日も日曜日もない生活だ。
それでも、教授たちは頑張る。

日頃、工学部の内部の事情を知る機会はない。
技術国日本を支えるエンジニアたちには、七つの教えという鉄則があるという。

第1条 決められた時間内に遅れないこと(納期を守ること)
第2条 一流の専門家になって、仲間たちの信頼を勝ち取るべく努力すること
第3条 専門以外のことには、軽々に口出ししないこと
第4条 仲間から頼まれたことは、(特別な理由がない限り)断らないこと
第5条 他人の話は最後まで聞くこと
第6条 学生や仲間をけなさないこ
第7条 拙速を旨とするべきこと
本文 抜粋

“つまらないことばかりじゃないか”と思うかもしれないが、「ハイネ・ボレルの定理」のごとく、エンジニア集団を被覆する大原則なのだそうだ。
そういう様々な「小さな親切」が、彼らの未来をつくる秘訣なのだろうか。

柔硬な文体で、ふと笑いをこめながらも唸ってしまう。
そんな巧妙な文章は、硬いと思う内容を楽しめるものにしてくれている。
そんな、旨い文章の作品だった。

(J)

「工学部ヒラノ教授」