人の精神・心(心理)を、あくまで科学的なものとして研究し、分析し理解しようとしたフロイトと、人間をよりトータルなものとして研究し理解しようとしたユング。
ユングは一時、フロイトの後継者とまで言われながら、決別している。
その別れの背後にいた一人の女性・ザビーナ。

ザビーナは、ユングの患者だった。
が、後に分析家になる。

この映画は、ユングとフロイトとザビーナとの物語である。

第1次大戦前の1904年チューリッヒ・ブルクヘルツリ病院に一人の女性が患者として入院してくる。
名前は、ザビーナ・シュピールライン。

ユングは、この女性患者に毎日1時間程度ただ話をするように申し出る。
そのことを承諾したザビーナは、毎日ユングと語る。

その当時、フロイトが編み出した自分のことを話すことで症状を失くす『トーキング・キュア』(話すことで治療する方法)をユングも取り入れていた。

この美しい患者・ザビーナは、転移状態でユングに恋心を抱き、またユングも彼女に惹かれていく。
ザビーナはフロイトが示す理論によくかなう患者だった。
マゾヒスティックなものに興奮するザビーナは、ユングに関係を求め、ユングもそのことに答えていくことになる。

ザビーナの症状は良くなり、仕事としてユングの助手を手伝うことになる。
しかし、ユングとザビーナの患者と治療者以上の関係を、フロイトは知ることになる。

その背後には、ユングと同じくフロイトの後継者と目されていたオットー・グロスの存在もあった。

神経症の原因を抑圧し、衝動を抑えることを良しとしなかったグロス博士は、フロイトやユングが止めたにも拘らず、自分の衝動を抑える事を辞め、やがて、フロイトやユングの元を離れる。

しかし、分析家としてザビーナとの関係に悩み苦しむユングは、彼女と別れることを決意し、ザビーナもまた、愛に苦しむ。
ユングも元を離れた彼女は、分析を受けるべく、フロイトのいるウィーンへと旅立つ。

また、大学で分析を学び、学位を治め、結婚し、ロシアへと旅立つことになる。

夢分析のシーンがあるが、フロイトの解釈にユングは納得できず、反対にフロイトは、ユングの超上学的説に危険を説く。
そして、このザビーナの存在は、フロイトとユングの関係に微妙なものを残す。

ユングは、フロイトとの別れの後、精神衰弱に陥る。
フロイトは、第1次大戦でドイツを離れることになる。
心理学の大家の二人、ユングの豊かな環境とユダヤ人のフロイトの環境の違いも興味深く描かれている。

(J)

「危険なメソッド」