2012年 モスクワ国際映画祭
最優秀監督賞・主演女優賞・審査員特別賞受賞作品

黄金のオルドと呼ばれるキプチャク・ハン国は、その〝黄金”という名の通りに、豊かなある食べ物や庶民も裕福な生活をしていた。

オルドの君主であるティニベクは、実の弟・ディニベクの手にかかり殺害される。

母親で王妃でもあるタイ・ドゥラは、悲しむと共に、次の君主になったディニベクの力をどこかで疑ってもいた。

ディニベクは、本当の戦争を知らない。
経験がないのである。

オルドでは、奴隷として白人が働く。
食べ物も少なく、労働力として、貧しい生活を強いられていた。

そんな時、王妃タイ・ドゥラの目が見えなくなる。
医術師や魔術師が王妃の目を治すべく、いろいろな事を施すが、眼は見えない。

その時に、君主ディニベクが目を付けたのが、ロシア教の偉大なるアレクシイ司教であった。

目を直さなければ、ロシアを責めると脅かされた司教は、一人の信者と共に奇跡を起こすためにオルドに赴く。
奇跡を起こさなければ恐らく命はないだろうと、覚悟を決めて王妃の目を治そうとするが、イエス・キリストが目の見えぬ人を直したようには、上手くはいかず、奇蹟は起きなかった。

目を治すのに失敗したアレクシイは、裸にされて町に放り出される。
殺してくれと頼むが、ロシアが火の海になるまではそれも許されなかった。

白人の労働者と共に苦しい労働を強いられるアレクシイであったが、総ては神の心とただひたすら働く。
一緒にオルドに来たロシア教の信者は、異教のイスラムの祈りを唱え、苦しみの中で信仰を捨てる。
そんな彼に心を砕きながら、アレクシイはひたすら働く。

衣服に付いた火に焼かれて、嵐の中、町の放り出されたアレクシイの身に起きたことは…。

ファンタジー・アクション映画。
黄金の国のオルドの豊かさと残虐さが、スリリングな感じを醸し出す。
権力闘争の末、次々と君主が殺されて、遂には滅びてしまったというオルド国。

『おごれるものは久しからず』なのかな…。
でも、そんな言葉がふと口に出る。
そんな映画だった。

(J)

「黄金の国の魔術師」