2000年 韓国映画
〝イルマーレ”とは、イタリア語で『海』のこと。
1999年12月29日、海のすぐ傍に建てられた家〝イルマーレ”に住んでいたキム・ウンジョは、新築のマンションへと引っ越す。
〝イルマーレ”という名のこの家はどことなく寂しげでそれでいて暖かい、そんな雰囲気のある家だった。
イルマーレを離れる時にウンジョは、自分に来た手紙を新しい住所に送ってくれるように頼む手紙をポストに残す。
ハン・ソンヒョンは、新しく建てられた家に引っ越す。
とても気に入ったこの家にソンヒョンは〝イルマーレ”と言う名前を付ける。
そして、1997年12月29日、彼はポストに入れられている手紙を見つける。
『自分あての手紙を新しい住所に送って欲しい』と書いてある。
誰かの悪戯だと思ったソンヒョンは、この家に住むのは自分が初めてだという事を手紙に書いてポストに入れる。
その手紙を見たウンジョもまた、手紙の内容を信じることは出来ず、悪戯と思いながらも返事を出す。
今は、1999年だと…。
もし、手紙の内容や日付が本当なら、1月9日には大雪になるはずだという事を手紙に書く。
占いや預言者の如く、ウンジョの手紙の内容は当たっていく。
まるでエッシャーの世界のように、時間のずれがある。
信じがたい思いを持ちながら二人は手紙のやりとりを始める。
ポストは色々なものを届けてくれた。
ウンジョが無くした録音機をソンヒョンが届け、お礼にとソンヒョンに贈り物をする。
いつしか、手紙のやりとりは、二人の心に大きな位置を占めていく。
イルマーレは、ソンヒョンの父親で建築家のハン・ソクチンが建てたものだった。
ソンヒョンが7歳の頃に父親は彼を捨てた。
それ以来、彼は父を父と認めていない。
建築家を志すソンヒョンであったが、父親の愛情を感じることは彼にはできない。
一方、ウンジョは声優を目指す。
学校の先輩で恋人でもあるジフンは、アメリカに留学していた。
最近では連絡も無くなっている。
彼の帰国を一人待つウンジョだったが、ジフンの連絡先の電話をしたら、出てきたのは女性だった。
失望や苦しみを抱えて、二人は手紙で励まし合う。
[二人で] 遊園地へ行く。
[二人で] スパゲティ料理を作り気分を発散させる。
[二人で] 散歩する。
お互いに会う事のない時間の中で、二人は同じ行動をする。
ウンジョに会おうと彼女の馴染みの電車に向かうが、そこにはまだ彼を知らないウンジョが居た。
1週間後にソンヒョンに会うことを決めたウンジョだが、ソンヒョンにはその時間は2年と1週間後。
それでも二人は会うことを決める。
約束の場所に行くウンジョだが、そこには彼の姿はなかった。
一体何があったか‥‥。
時間を超えて二人は出会う。
お互いに惹かれながらも、会うことは難しい。
〝イルマーレ”という題名に相応しい美しい景色と心から楽しめる秀作である。
ソンヒョンが2年前のウンジョに会いに行くシーンがあるが、彼女はまだ彼を知らなくて、胡散臭い感じで彼を眺める。
切なく悲しくやるせない感じは、恋愛映画の特徴でもあるのだろうが、思わず、『その人は手紙の彼よ!!!』と叫んでしまいそうになる。
ハラハラと楽しみながらの素晴らしい時間が流れる。
そんな感じかな…。
(J)