スペインゴヤ賞 9部門 受賞作品
スペイン内戦後のカタルーニャ地方でのこと。
タイトルの「ブラック ブレッド」とは、貧しい人々のことを指すという。
内戦後のカタルーニャ地方は、勝ち組と負け組で、生活が随分違っていた。
負け組は極貧の生活を強いられ、生きていくために様々な事をせざるを得なかったという。
主人公はアンドレウという少年である。
両親と共に貧しさの中で暮らしていた。
ある日、アンドレウは、馬車ごと崖から落ちた父子を見つける。
警察の調べで、事故ではなく、殺人と判断される。
落ちた馬車のなかに居た父親の名はディオニスと言い、アンドレウの父親と仲が良かった。
また、少年は瀕死の重傷を負っていた。
そこでアンドレウは、「ピトルリウア」という謎の言葉を聞く。
「ピトルリウア」とは、パウマスの洞窟に住む怪物だと聞いている。
アンドレウは、仲の良い両親とともに暮らし、貧しくても心満ちた生活をし、両親を愛していた。
しかし、ディオニスの死と絡んで、父親が家を出て行かねばならなくなり、アンドレウはいとこ達と共に暮らさねばならなくなる。
やがて、少年は今まで隠されていた様々な事実を知るようになっていく。
両親の嘘。
大人が共謀してつく秘密。
いとこのヌリアは、そんな様々な事をアンドレウに語る。
ヌリアは片手の手首がない。
ヌリアの言葉は、悪意なのか善意なのか、語る言葉は真実なのか。
父や母の言うことを信じたいと願いながらも、次第にアンドレウは周りの大人たちに不信感を募らせる。
そして、父親の逮捕、父親の死をきっかけに、アンドレウの心は、冷たく固く 閉ざしていく。
時代背景によって、映画の見方も随分違う。
貧しさの中でも、自分を信じて信念を曲げないアンドレウの父親の姿と、その夫を大切に思う妻の姿が映画に描かれている一方で、子どもや家族のために人には語れないこともせざるを得ない。
主人公アンドレウの両親への思いは、映画の進行とともに変化していく。
誰も何も信じないし心を頑なにしていく。
信じることが出来なくなっていく理由は、誰の、また、どんなものがそうさせるのか。
両親なのか、はたまたそうせざるを得ない状況なのか?
見ようによっては、本当に切ない映画である。
(J)