全世界を魅了して止まない 『トゥルーマン・ショー』。
主人公は、ジム・キャリーが演じている トゥルーマン・バーバンクである。
彼は、テレビの映像を通じて、世界から見守られてきた。
生まれる前のお腹の中から、そして日々成長する彼の姿は、人々の関心の的でもあった。
彼が歩き始める時、彼が恋愛する時、彼が寝ている時、彼がほほ笑む時、いついかなる時も、カメラを通じて彼の様子は全世界に報道されていた。
トゥルーマンの世界は、人工的に造られた大きなドームの中であった。
天気から季節まで、すべてのものが管理され、母親・父親・妻・友人・近所の人から、何から何まですべては俳優が演じていた。
監督の命じる通りに、キャスティングされて、演じられていた。
そして、何も知らないのはトゥルーマン本人のみであった。
彼は、この自分の生活している所から一歩も外に出たことがなかった。
いつか外の世界に出て行くというのが彼の夢でもあった。
だが、彼が外に出ようとすると、様々な妨害が入る。
トゥルーマンはそのことを不思議に思いながらも、日常の生活していた。
そんなある日、海の事故で死んだはずの父親に会う。
彼には心の傷にもなっていた父親の死。
必死で父親を追いかけるが、父親は何者かによって連れ去られる。
周囲の人たちに必死で父親のことを訴えるが、取り合ってもらえない。
段々と周囲に不信感が芽生えてきて、自分の日常を観察するようになる。
何かがおかしい。
皆が何かを隠している。
そんな風に感じ始めたトゥルーマンは、思い切ってフィジーと呼ばれる外の世界に行くことを決意する。
映像を通じて、
人々はそんな彼を応援する。
彼が泣けば、皆も泣く。
彼が笑えば。皆も笑う。
テレビの前に釘ずけになり人々は彼を応援する。
そんなある日、妻が勤務先の病院から帰宅するや否や、トゥルーマンは、妻と一緒に車で違う所に行こうとする。
彼は水が大の苦手。
でも、今まで車でさえ走ることにできなかった橋を越え、彼は脱出を図る。
止める妻や周囲の警告を無視して、ひた走りに走るが人々に取り押さえられて再び家に。
脱出は簡単ではないことを知ったトゥルーマンは、秘かに計画する。
自分の知らない世界に向けて、彼は脱出を試みる。
自分以外は、すべて事実を知っている。
ただ自分だけがそのことを知らない。
危険も何もない世界。一生安全で平安な世界。
人間の心の発達の一部に、『好奇心を持つ』ことがある。
未知のもの・自分の知らないものをを知りたいという欲求でもある。
彼に与えられなかったこの『好奇心』を心に秘めて、彼は、安全で豊かでもあろうこの世界を脱出するだろうか?
現在の私たちの世界は、危険と隣り合わせの世界。
不信感もありながらも、何処かで人を信じ、自分を信じたいと思っているのではないだろうか。
『好奇心』は、時には無謀とも思える行動をとる。
でも、何かに感じる不思議さを納得するには、自分自身を信じて、この無謀とも思えることに挑戦する必要がある時もある。
彼のように冒険に飛び出す心の準備は、一日ではできないかもしれない。
脱出を諦めない彼の姿に、テレビの観客は感動を覚える。
彼を応援し、共に泣き、共に笑う。
(J)