映画「エス」の心理実験よりもさらに数年前に、あるハイ・スクールで実際に起きた事件。
たった5日間の実習での出来事。

ライナーは、短大を卒業して、体育の教師になる。
そして、学校の実習で、“独裁制”の実習をすることになる。
その実習の目的は、“民主主義の長所を教えること”にあった。
生徒たちの日々の生活は、ドラッグやアルコール、カツアゲに満ちていた。

授業は、“独裁制”とは何かから始まる。
独裁性とは、“ある個人・グループが大衆を支配下に置くこと”。
生徒たちは、ライナーの実習に興味を抱き、自分たちのグループに“ウェーブ”という名前ををつけ、制服に白のシャツを着る。
そして、何かを求めて、のめりこんでいく。

規律・イデオロギー・指導者など今までの生活に無い新しいもの。
団結力を説く「ベンガー様」。

次第に、加熱していくグループ。
このグループに違和感を持ち、注意を促す女子生徒のカロ。

ライナーは、指導者に選ばれ、生徒に「ベンガー様」と呼ばれる。
彼の言葉ひとつで皆が動く。
過激な動きをライナー自身も注意していた。
にも拘らず、ウェーブは軌道を外れていく。

映画「エス」も心理実験の映画である。
初めて「エス」を見たとき、人間の持つ弱さや脆さを実感する。
ある役割に人が嵌るとき、普段のその人とは思えない行動をとる。

今回の映画「ザ・ウェーブ」もドイツに再び「独裁」は起きないのかと問う。

ドイツは自らの行動を深く反省した国だという。
ドイツだけでなく、世界中に「独裁」はもう起きないのだろうか?

誰もが持つ、心の不確かさ。
生徒たちは、「独裁性」の持つポジティブな側面をも表現する。
どこまでが独裁で、どこまでが規律か?
その境を誰が見分けるのか?

過剰な愛国心が生み出す「独裁性」自分を愛し過ぎると、それも「独裁」かな・・・という考えが心をよぎる。

(J)

「THE WAVE」 ザ・ウェーブ