2006年 フランス
第63回 ヴェネティア国際映画祭 銀獅子賞 受賞

フランス・パリを舞台に、6人の男女の心模様を描く作品。
ごくありふれた日常生活の中に潜む、孤独や人間同士の微妙な心のひだを描く。ティエリーは中年の不動産を仕事とする。
今日の客は、ニコールという女性だ。

ニコールは一緒の棲む恋人のダン(ダニエル)と棲む家を探しているが、何処も狭い。
なぜならダンは自分の書斎を欲しがっているからだった。
とくに、書斎を必要としているようには見えないダンだが、彼は何故か書斎にこだわっている。
今日の物件もどうやら駄目なようである。

ダンは元軍人だが、退役後はお酒を飲む生活が続いている。
ニコールはそんな彼に働くことを進めるが、ダンは仕事先を見つけることすらしない。
イライラして二人は口げんか。
お互いに求めあっていた関係は、少しづつ変化している。

そんなダンにとっていい話し相手はホテルのバーテンダーのリオネルだった。

不動産屋のティエリーの同僚は、シャルロットという名の女性だ。
彼女は堅物。
宗教に厚くティエリーに進めるビデオは、宗教がらみだった。
ティエリーは断れなくてビデオを家に借りて帰ることになる。
が、そのビデオには堅く真面目な音楽の番組と、強烈なセックスシーンが映っていた。
しかもそのシーンを演じているのはシャルロットではないか!

ティエリーは画面にに釘ずけ。
一緒に暮らす妹のガエルには知られたくない。
ガエルが家から出て行くと、彼は夢中になってビデオを見る。

バーテンダーのリオネルには、ベッドの寝たきりの父親がいた。
父親は、暴言を吐いたり物を投げるので、お手伝いの人がなかなか居つかない。

そんなリオネルのもとに、夜だけ介護をするために現れたのはシャルロットだ。
彼女もまた、父親から暴言を浴び物を投げつけられながらも、介護をこなす。
そう、神に祈りながら…。

ガエルは、兄には友達と会うと言いながら、実は出会い系で男性を待つ。
そんな彼女のもとに現れたのはダン。

ダンはニコールとは関係はもう持たないとリオネルの話す。
そんなダンにリオネルは、ニコールと距離を取ることをすすめ、その方法の一つとして別の女性と付き合うことを進めた。
その相手がガエルだった。

ダンは、彼を許せなくなっていたニコールに家を追い出され、ホテルに暮らす。
そして、ガエルに夢中になる。
しかし、最後の別れでニコールに会っている所をガエルに見られてしまう。
ショックを受けたガエルは走り去る。

オムニバス風の作品で、雪が降り続くパリの町中での物語だ。

『悪魔は自分自身の心の中にいる』
というシャルロットの言葉は意味深だ。

性と生、聖と悪のコントラストが、この作品に深みを与えているように思う。

リオネルの父親は具合が悪くなり入院し、シャルロットの介護の仕事は無くなる。
ガエルは失意のまま、兄の元に帰る。
ダンはニコールもガエルも失い、ティエリーがシャルロットから借りたビデオには、もう何も映っていなかった。

日々の生活はまた続き、雪もまた降り続けるのだろう。

(J)

「6つの心」