月本 洋 TSUKIMOTO Hirosi ・上原 泉 UEHARA Izumi
月本 洋 (つきもと ひろし)
東京大学大学院工学系研究科修士課程修了 博士(工学)
東京電機大学工学部教授
主要著作に、『実践データマイニング』『心とは何か』『ロボットのこころ』他。
上原 泉 (うえはら いずみ)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了 博士(学術)
神泉女学院大学人間学部講師
主要著作に、「再認が可能になる時期とエピソード報告開始時期の関係:縦断的調査による事例報告」『教育心理学研究』,46,271-279 他。

想像(力)は、過去に哲学者等を始め、多くの人が語り、また、現在でも心理学、認知科学、神経科学などでもイメージ・想像(力)の研究は行われている。
想像とは心の機能である。
身体運動は体の機能である。
実験結果では、身体運動と身体運動の想像は、基本的に脳の同じ部位で行われるという。
脳の同じ場所が、実際の運動でも、その想像でも処理しているということは、身体運動の想像は仮想的な身体運動であるということになる。
そして、その想像観に基づいて、心を見直しているのが本書である。
言語機能、人間の言語使用、言語理解における想像、イメージの重要性、また、身体運動論、動物や機械の想像力について、そして、さらにインターネットよるコミュニケーションの変化、子どもの発達と想像力の関係についてなど、想像に関する様々な事柄を取り上げている。

自己理解と他者理解を表裏一対のものとみなすことは、特殊な見方ではない。
自分を認識するためには、他者を認識し、他者と区別してとらえる必要がある。
自己認識の確立には他者認識が重要である。
「心の理論」研究では、「心に理論をもつ」ということは、「人の心を推測できる」ということを意味する。
この「心の理論」は、4歳かそれより少し前に成立するとされる。
自分の感情を理解することや記憶することも想像と関連する。
「怒っている人」と「自分は怒っている」などを、区別したうえで理解することや、「覚えている」や「忘れている」ということを成人のように使うようになるのには、4歳から4歳半ぐらいだ。

インターネットなどの普及で、想像力が衰退しているという。
言語理解は身体が基礎になっている。
仮想的身体運動としてのイメージは、体と心をつなぎ、言語理解を根づかせるという。
そして、イメージなどの衰退で、イメージなしに理解できるような時代が来るのだろうか。

インターネット文明は、まったく新しい進化的な変化を生み出すとしたら、それはどのような変化になるのだろうか。
感情やイメージもないその文明とは、人工的な環境なのだろうか。
また、その中で、人間の脳も違ったものになるのだろう。

(J)

 

 

 

「想像」 心と身体の接点