田中 芳樹
1952年、熊本県生まれ。
学習院大学大学院修了。
78年「緑の草原に・・・」で幻影城新人賞受賞。
89年《銀河英雄伝説》で第19回星雲賞を受賞。
《創龍伝》《アルスラーン戦記》《薬師丸涼子の怪奇事件簿》シリーズの他、『マヴァ―ル年代記』『ラインの捕因』など著作多数。

悠久の時間の中を、煌く流れのように、銀河を統一しようとした人々がいた。
『三国志』や『史記』を思わせるような、そして、未来の歴史小説の匂いがするこの小説「銀河英雄伝説」は壮大な宇宙の物語だ。
帝国・同盟・フェザーンの三国と、地球教の工作を絡めて、それぞれの思惑を綴る。

時は遠未来。
世界は銀河へと広がっていた。
帝国の貧しい貴族の家に生まれたラインハルト・フォン・ローエングラムは、母代りの姉アンネローゼが第37代皇帝のルドルフ・フォン・ゴールデンバウム王朝の後宮に納められる。
ラインハルトは、無二の親友であったジークフリード。キルヒアイスと共に、不敗した貴族たちのゴールデンバウム王朝を倒し、宇宙を統一することを誓う。
姉の後ろ盾とラインハルト自身の才能で、20歳で元帥となり、『常勝の天才』と呼ばれるようになる。
誰もが称賛する美しい容姿と、その比類なく才能で、のちに、銀河宇宙の統一を果たしていく。

同盟に生まれた青年ヤン・ウェンリーは、歴史家を夢みたが、父親が死んだあと、歴史を学ぶつもりで入った宇宙艦隊で幕僚となり、後にラインハルト率いる帝国軍と戦うことになる。
ヤンは、民主主義を良しとしていたが、同盟は、政治家などの不敗や保身が横行しており、そのことに疑問を投げかけながら、また、自身の考えの矛盾に苦慮しながらも、帝国軍や様々なものと、戦うことになる。
難攻不落といわれたイゼルローン要塞を犠牲なく奪回したりするなど、『不敗の魔術師』と呼ばれ、その名を残すこととなる。
ヤンには、孤児であるユリアン・ミンツを養子にしていて、ヤン亡き後は、ミンツがその意志を引き継ぐことになる。

フェザーンは、自治領で、商業の地として栄えていた。
帝国と同盟の間をうまく泳ぎ、利益を得ていた。
そのフェザーンの第5代目アドリアン・ルビンスキーは、『フェザーンの黒狐』と呼ばれ、背後で地球教などとも手を結び、利益を思うがままに動かすことをもくろんでいた。
帝国を統一したラインハルトは、その後、フェザーンを手にいれ、銀河宇宙を統一するために、同盟へと戦いを繰り広げていくことになる。

全10冊からなる『銀河英雄伝説』正伝は、超長編小説だ。
だが、一度読み始めると、どうしても先が気になる。
気になって仕方がない、そんな小説だ。

スペースオペラとしても、質の良い大作として、30年近く人気を博している。
テレビ化もされる予定らしい。
“10冊はとても・・・”と思われる方は、アニメでどうぞ。

(J)

「銀河英雄伝説」