ビル・ブライソン Bill Bryson
1951年、アイオワ州デモイン生れ。
イギリス在住。
英語や紀行、アウトドアなど幅広いテーマでベストセラーのある作家。
日本での訳書に『英語のすべて』『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』『ことばが語るアメリカ史』『ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー』『シェイクスピアについて僕らが知りえたすべてのこと』などがある。
本書でイギリス王立協会科学図書賞とデカルト賞を受賞した。
宇宙ができて137億年といわれている。
本書でのページ数が1000ページにも及ぶこの“宇宙史”を、最初は躊躇いながら、最後はフル回転で楽しみながら読む。
ちょうどいい大きさの太陽、地球を甘やかしてくれる月、原始社会のアニマル炭素、大気はコンクリートほど頼もしく地球を守っている。
どれ一つ違っていても今の私たちはいないということを、ユーモアを交えて語る本書は、とてつのなく頼もしい本だ。
読めば読むほどいかに脆く危ういバランスのもとに人類が居るのか、切々と訴えるものがある。
また、小さい頃からの不思議を専門的な説明を加えて解説する。
が、読めば読むほど別の不思議が出てくる。
それほど宇宙や地球の謎は多く、また、とてつもなく深いということだろう。
対象分野は、天文学、物理学、化学、生物学、地学、数学、医学、力学、知恵学、文化人類学、博物学、分子遺伝学だ。
巻末に掲載されている参考図書は、それぞれの項目に対して書かれており、総数301冊あり、その中には読み応えのある専門書も含まれているという。
4日に一冊の割合で読んで、3年間読み続けることになるようだ。
結びの章で、マダガスカル島の東およそ千三百キロのインド洋に浮かぶモーリシャス島に暮らしていた、飛べない鳥として有名だったドードーの話が書かれている。
ドードーは賢くはないがとても人なつこく、動くも鈍かったので、モーリシャス島に上陸した若い水夫たちの格好の餌食になり、気紛れで横暴な人間の振る舞いで絶滅したという。
無害で無力で、極度の近眼だったドードーを何の意味もなく絶滅させるとこができた。
完全にドードーの姿が見えなくなったのは1693年だという。
アメリカでは2万年前から1万面前にかけて、人類の進出とともにおおがた動物が30属も姿を消した。
1万年前で四分の三に減り、オーストラリアでは、大型動物の数は95%減少した。
シカゴ大学の古生物学者ディヴィッド・ラウブによると、生物史を通じて絶滅の自然発生率は4年に一種だという。
最近のある計算では、人為的な要因による絶滅の発生率はその12万倍に達しているという。
その人間も、自然の驚異の中で、暮らしている。
無尽蔵なマグマ、未だにオゾンを破壊すると言われているフロンガスは使われており、降り注ぐ有害な紫外線の影響もあるだろう。
自分の知的興味を満足させながら、ほんのちょっと今の生活を振り返ると、本当に知らないことが多くあるのに愕然とする。
本書は、その道しるべとなる貴重な一冊だろう。
(J)