「ロウソクの科学」の著者であるマイケル・ファラデー(Michel Faraday, 1791-1867)は、イギリス・サリー州ニューイントン・バッツという村に生まれる。
父は鍛冶屋で、ファラデーが生まれた頃にロンドンに移住した。
産業革命当初は、多くの人がより良い仕事を求めて、大都会に移住したという。
子ども時代にファラデーが受けた教育は読み書きの手ほどき程度だったという。
労働者階級の子どもが受ける教育としては、ごく当たり前だったらしい。
書籍業の製本の使い走りをしながら、ファラデーは電気関係の本に興味を持ち、自分で実験を試みたりするうちに、化学と電磁気学に関心を持つようになった。
おそらく真面目で向学心に富むファラデーを、店の上得意の裕福な紳士で、名高い音楽教師であり、王立研究所会員ダンスが目をかけたのだろう。
そして彼は、王立研究所の講演会をファラデーにプレゼントする。
この講演会の入場料は当時としては法外な値段だったという。
そしてそれがきっかけで、ファラデーは科学で生計を立てたいと思うようになった。
ファラデーは長い伝統を持つ王立協会会長に手紙を出すが、当時の階級社会を考えれば無理であったろう。
諦めずに、苦心のノートを添えて手紙を送り、気持ちを聞いてもらえたが、採用はされなかった。
が、いかなる天の配剤か、王立研究所の助手のポストが空き、ファラデーは採用されることになる。

この「ロウソクの科学」は、ファラデーが青少年のためのクリスマス講演の講義録である。
製本工から王立研究所の助手となり、後にその功績が認められて研究所所長となったファラデーは、新企画として6回のクリスマス講演をするようになる。
対象が青少年なので、話される言葉は彼らが理解できるようにしてあり、さまざまな実験を実演し、無理なく科学に興味が持てる内容である。

人間とロウソクは類似点があり、人間は息をして炭酸ガスを出しように、ロウソクの燃焼して炭酸ガスをだし、
それを樹木がまた酸素へと変える。
限りない生命の循環を、さまざまな化学実験で語られるこの本は、難しくもあるが、当たり前としての身近な科学を興味を持ち、親しみ深く分かるように、工夫されて書かれている。

彼の研究成果は、さまざまな化学・電気の分野にまたがり、『ファラデーの法則』として知られるものもある。
化学・原子なども見つけた彼だが、ただ科学することに強い興味関心があったらしい。
ナイトの称号も貰い、最高の栄誉の輝いたファラデーの、真の『化学が好き』が書かれた本である。
そして、今なお科学することの精神を使える名著でもある。

(J)

「ロウソクの科学」