隠岐の離島に生きる幸齢者たち  柴田 久美子

「人生の99%が不幸だとしても、最後の1%が幸せならば、その人の人生は幸せなものに変わる」
マザーテレサの言葉

日本海に浮かぶ小さな離島、島根県隠岐の知夫里島。
ここに一人暮らしのお年寄りが人生の最後の日々を過ごす看取りの家「なごみの里」がある。

ここの代表者である 柴田久美子さんは、日本マクドナルド㈱に入社。ライバル競争に勝ち抜き、人も羨むようなビジネスチャンスをつかみながら、その生活に疑問を持つ。

その後、老人介護の世界に魅かれ、特別老人ホームやホームヘルパーを経る。
延命治療によって、いわば強引に生かされた状態の人たちを数多く見てこられた柴田さんは、そんな光景に耐え切れず、平成10年に、知夫里島に、「なごみの里」を開く。

「なごみの里」では、高齢者を幸齢者と書く。
人間としての尊厳を保ちながら、人生の最後の日々を迎える。

マザーテレサの施設「死を待つ人の家(カリガート)」をテレビで見て、そこにある、やさしい笑顔とメッセージに心ひかれ、人生最後の最後に「ありがとう」と言って、この世を去って行く。
逝く者にもにも、送るものにも、大きな愛が送られるその瞬間。
彼女の心の底から求めて止まない看取りを、現実のものにしている。

「死」を忌み嫌う文化を持つ日本。
その中で、真っ直ぐに「死」に向かう。

「死」は、たった一つの通過地点でしかない。
そのことを日々、経験しているのであろう。

(J)

「ありがとう」は祈りの言葉