中島 たい子 なかじま・たいこ
1969年東京生まれ。
多摩美術大学卒業。
放送作家を経て脚本家に。
2004年に『漢方小説』ですばる文学賞を受賞。
著書に『そろそろくる』『建てて、いい?』『この人と結婚するかも』がある。
川波みのりは、31歳で脚本家、独身。
今さらこの人と結婚なんてことはないはずの元彼から、『今度、結婚する』話を聞く。
その時食べた牡蠣が悪かったのか、はたまた、周囲が言うように「精神的ストレス」なのか、みのりの胃は、ひっくり返ったようになる。
大家さんのよんだ救急車に乗って、救急病院に運ばれるが、途中で症状は無くなり途方に暮れながらも、『救急マニュアル・ハンドブック』を手に持つ医師に診察を受ける。
胃がロデオのようになるこの症状で、4か所の西洋医学の病院を廻るったが、思うような答えや症状の改善は見られない。
そこで、小さい頃に喘息の治療で通った東洋医学の医師を思い出す。
実家に帰って診察券を持ち、独特の匂いのする漢方診療所で出会った医師は、若い坂口先生だった。
脈診や舌診と患部の腹診で、ぴたりと症状を言い当てられたみのりは、漢方医学と坂口先生に嵌ってしまう。
これと言った診断名のないまま、そして、『西洋医学でなくて、大丈夫なの?』と、周囲の友だちから訝しがられながらも、みのりはせっせとこの診療所に通うようになる。
漢方医学の中心的考え方である陰陽五行説を、簡単にしかもわかりやすく書かれている。
西洋医学的なものの見方に慣れている私たちには、多少違和感があるが、中国の長い歴史と主に発展してきたこの医学には、西洋思想にない独特の考え方がある。
みのりの症状は漢方にぴったりと合った。
少しづつ症状は楽になり、ふとした油断で再び症状を悪化させたりもする。
そうこうしながら、みのりも漢方医学を調べて、自分の飲むお薬でもある薬草や、『中医基礎理論』なる本を購入し様々な事を調べる。
表面に出ている症状を軽くし、根本的な身体の症状を直す。
みのりは、少しづつ症状も軽くなり、元気になった頃に、坂口先生も診療所を去る。
めでたしめでたしの物語。
コミカルな表現で書かれている文体に、
思わず笑いころげてしまう。
笑いながら心が解れる。
解れながら納得する。
そんな本だった。
面白かった。
(J)