池谷 裕二 いけがや ゆうじ
1970年生まれ。
薬学博士、東京大学大学院薬学系研究科教授。
科学技術振興財団さきがけ研究員。
日本薬学理学会学術評議委員。
専門分野は神経生理学、システム薬理学。
海馬の研究を通じて、
脳の健康や老化について探究している。
日本薬理学会術奨励賞、
日本神経科学学会奨励賞。
2002~2005年コロンビア大学客員研究員。
著書に『記憶力を強くする』『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』
『脳はなにかと言い訳する』『海馬』(糸井重里氏との共著)
等がある。
2002年12月、ニューヨークに留学した池谷さんの元に、ニューヨークの高校生を相手の脳の講義をしてみてはどうかと打診があり、自分自身にも刺激になると思い、その講義を引き受けた。
その時の講義の内容と、2年半の月日が経過したのちの、研究室のメンバーとの話を合わせて、一冊の本にしたものである。
「脳の話し」というと、何だか小難しいのではと思うかもしれないが、高校生を相手にしているからだろうか、簡単な言葉で興味深く読める。
脳は場所によってそれぞれに役割を持つ。
たとえば視覚野は、ネズミの場合はここ、ネコの場合はここ、人はここと説明し、それはどういう違いをもたらすかを説明する。
視覚のメカニズムから、人間の脳は漫然とモノを見ているとか、ではなぜ漫然と見る必要があるのか、そしてその結果として私たちが手に入れた能力は、記憶力であるとか…。
そして心とは何か。
心は何処にあるのか。
意識は作り出すことは可能なのか。
もし作り出すとしたら考えるロボットはできるのか。
などなど…。
→ 感情というか、心はどこにあるのだろうか
<報酬系)を刺激し続ける話がありましたが、 たとえば悲しいという感情を引き起こすような神経を刺激すると、 みんな泣くでしょうか?
私なんかが考えると、 脳とその感情は別のもののように思えます。
みんな意識を持っていますけれど、 感情もありますよね。
たとえばネズミは報酬系をずっと刺激し続けて、 ずっと餓死するまでやり続ける。
ネズミが餓死していくときの気持ちを想像すると、 ちょっと混乱しちゃうんですけれども、 心と脳がどういうふうに関わっているのか。
本文 抜粋
報酬系という脳の快楽物質を出す部位を刺激されたネズミは、その刺激を受け続けているかぎり、餓死してしまうまでやり続けるという話だ。
何ともいえない話しで、恐ろしくもある。
また、脳に損傷を受けた人の例などを交えて、まだまだ入口の過ぎない脳の研究を最前線を、伝えている。
読みごたえがあるながらも、納得する何かがあり、専門書のような難しさもない。
良書である。
(J)