北村 薫 Kitamura Kaoru
1949(昭和24)年埼玉県生れ。
早稲田大学ではミステリー・クラブに所属。
母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、’89(平成元)年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。
’91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。
『鷺と雪』で直木賞受賞。
小説に『秋の花』『六の宮の姫君』『ターン』『スキップ』『月の砂漠をさばさばと』『ひとがた流し』など。
読書家として知られ、『詩歌の待ち伏せ』『謎物語』など評論やエッセイ、『名短篇、ここにあり』『とっておきの名短篇集』などアンソロジー、『北村薫の創作表現講義』『自分だけの一冊ー北村薫のアンソロジー教室』など創作や編集についての著書もある。
その名も小酒井都。
髪短く鼻筋通り、すっきりした顔立ちだ。
自分と言う車のハンドルをきちんと握っている人物にまあ見える。
仕事は文芸誌の編集者だ。
この都さんは、実はかなりの呑兵衛である。
飲んでもつぶれたりはしない。
吐いたり寝たりといった醜態もさらさない。
しかし酔うと普段よりも過激な行動をするタイプだ。
つまり、お酒が入ると自動車は見切り発車になる。
おやおや大変。
新人時代に、作家の御伴をして訪れた酒場で、大笑いし拍子に編集長の白いシャツに赤ワインをぶちまけた。
別の折には、上腕部をがっちり鷲掴みにしていじめた大先輩への絡み返す。
しかも何も覚えていない。
そんな都さんの仕事と恋と、お酒にまつわる様々なエピソードを、ほのぼのとしたタッチの文章で描く。
いつの間にか出来ていた、社内でもなかなかの美形の月形と、その上司である大曾根さん。
飲むと寝てしまう早苗さんと、その早苗さんを見守り、ついにゴールインした彼氏。
そんなエピソードを踏まえて、都さんの恋も始まる。
良き先輩に教えられる数々の仕事の仕方とお酒の飲み方は、人生の良きアドバイスでもあり、教訓でもある。
新人時代からのお酒にまつわる武勇伝を持ちながらも、都さんは、結婚と共にお酒との付き合いも覚えていったようである。
作家・北村薫さんは、様々なジャンルの本を器用に書く。
面白おかしく飽きがこなくて先を読ませる。
ワーキングガール小説として働く女子に共通の悩みや語らいは、お酒の物語でなくても十分楽しめるのではないだろうか。
ウィスキーや焼酎、酒のうんちくもあるが、一人一人の個性としてのお酒が、きらりと光る感じがする。
但し、お酒を飲んだら、車の運転はやめましょう。
お酒は飲んでも飲まれるな。
なんてね。
(J)