「人生がうまくいく哲学的思考術」  白取 晴彦

 

 

 

 

著者紹介
青森市生まれ。
ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を学ぶ。
既成概念にとらわれないで、哲学と宗教に関する解説書の明快さには定評がある。
主な著書に『超訳ニーチェの言葉』『頭がよくなる思考術』『独学術』『この一冊で「聖書」がわかる』などがある。

 

 

第3部 ニーチェが教える 力強い生き方

21 自分のルールで生きる

世の中をどう渡っていけばいいのかという処世について書かれた本は多い。また、倫理や道徳を教える人も多い。これこれをしてはいけない、人にはやさしく親切に、相手に立場に立って考えろ、等々。
それらがさらに細分化されて実践的なものになったのが、いわゆるノウハウとかハウツーというものだ。それだけではあきたらず、特定の現場でもっとも有効なハウツーすら出てくる。それがマニュアルだ。生き方、商売、あまつさえセックスにまでマニュアルが用意されている。

なぜ、自分で考えて自分なりに実行しないのか。世間の目がそんなに怖いのか。あるいは罪悪心を持つのを恐れているのか。それとも、自分で考えることすらできないのか。
たぶん、教えられた通りにやればうまくいくという迷信が蔓延したあげく、それがあたかも真理であるかのように信じられているのだろう。
教えられた通りに勉強しておけば、テストでいい点数がとれる。それをくり返してきたあげく、考え方が固まってしまっているのだろう。だから、学校での成績のよかった人はもろい。挫折すると立直りにくい。

固定観念を超越せよ

人生は固定観念を習う時間ではない。自分で生きていく時間であり、自分で生きていく場だ。頭と行動を既成のありふれた固定観念で染めてしまうと、自分はいなくなる。自分の中に古い他人がたくさん詰まっているだけだ。そんな人に個性などないのも当然だ。
定年を迎えた人が「第二の人生」と称して、俳句だの絵画だのエッセイだのを始める。彼らは誰もプロになれない。下手な俳句、下手な絵画、下手なエッセイ。なぜ自分が下手なのか理由さえ知らない。
その理由はシンプルだ。固定観念で物事にあたっているからプロになれないのだ。俳句とはこういうものだ、絵画とはこう描くものだ、という固定観念しか頭の中にないのだから仕方ない。

人が何かクリエイティブなことをして成功したいのなら、必ず概念、固定観念、常識といったものを超越しなければならない。名人や芸術家というのはそれを果敢にやってきた人々のことなのだ。固定観念の再現とか人の真似事がクリエイティブであるわけがないのだ。
誰もの固定観念にある何か、ではなく、自分の中にある何かを表現することがクリエイティブというものだ。そして、多くの人がつい忘れがちになっていることだが、この世を生きていくこともまたクリエティブなことなのだ。