トランスパーソナル心理学  transpersonal psychology

ryouhou15_1トランスパーソナルとは文字通り「個を超える」「個を横切る」心理学と説明される。人間性心理学。多様な意識体験、意識変性過程を主な研究対象として1960年代に生まれる。従来の「個」、自我偏重の理性中心主義を相対化すべく、より、幅のある広い視野から「個」を捉え直している。
トランスパーソナルの代表的セラピーとしてはサイコシンセシス、ホロトロピック・セラピー、プロセス指向心理学など、代表的な理論としては「意識のスペクトル」説、「アートマン・プロジェクト」説などがあげられる。理論面では、ケン・ウィルバーが代表的な存在である。ウィルバーは「意識のスペクトル」”Spectrum of consciousness”で、意識の全体を六つのレベルからなるスペクトラム、階層モデルでとらえた。

 

  1.  もっとも表層は〈影-ペルソナ〉のレベル。立場、役割、地位、性格、能力などの、自分の一部を自分のすべてだと思い込んでいるような意識レベル。意識されている部分を〈ペルソナ〉、他の部分を〈影〉とよぶ。
  2.  次の〈自我〉のレベルでは、意識はペルソナと影を合わせた〈自我〉まで広がっているが、身体とは分離している。しばしば自我の都合で身体の欲求が抑圧され、様々な神経症や心身症が起こることがある。但し、人間にはやはり安定したペルソナや自我が必要であり、ウィルバー・トランスパーソナル心理学は、安易にトランスパーソナルへ向かうことなく、まず自我・個人性を確立することが必須だと考えている。
  3. (1),(2)の奥には、ほとんど無意識化された〈生物社会的帯域〉がある。これは生物としての身体に取り入れられた社会的情報のいわば貯水池で、例えば母国語のボキャブラリーや文法構造、社会の文化的な信念や神話、家族の構造、規則、習慣などが含まれる。このレベルでの歪み、硬直化は、しばしば病理の源泉となる。
  4. 次は「ケンタウロス」と呼ばれる、一体になった心身(有機体)が「自己」と感じられるようなレベル。
  5. 〈トランスパーソナル〉な領域と呼ばれるレベル。人間の深層にある領域。個人性も有機体と環境の分離も超えられ、いわゆる超常現象や神秘現象が起こる。
  6. もっと深く包括的な〈心(Mind)〉、〈宇宙意識〉のレベル。東西の神秘思想が、例えば神、ブラフマン、道、無限、空、無、宇宙などの言葉で指し示した、人間と全者とが1つである究極のレベルであるという。

ryouhou15_2プロセス指向心理学(process-oriented psychology)

プロセス指向心理学(POP)は、ユング派の分析家、A.ミンデル(Mindell,A)が、ユング派の夢分析やアクティブ・イマジネーションを、実際の身体症状に適用したところから生まれた。そこで、見出されたのが、「心」と「身体(肉体)」の中間領域に属し、かつ深層の次元から、その両者を創出する「ドリームボディ(夢身体)」であった。これは、「物理的な身体」、「心身不可分の身体」であり、「イマジナルな身体」、「微細体サトル・ボディ」といわれるものに当たる。また、「ドリームボディ」は、「心身医学」の様に、心と身体を、「心身二元論」から「因果」的にとらえるのではなく、「共時」的に把握する観点でもある。
「ドリームボディ・ワーク」は、夢(心)のワークでもボディ(身体の)・ワークでもあり、夢のワークにもボディ・ワークにも限定することが不可能な両義的なワークである。
POPは、心のものとも身体のものとも断定不可能な、「心身」症との取り組みによって生まれ、発展を遂げてきている。

ハコミセラピー Body-centered Psychotherapy

1970年代にロン・クルツによって創出されたセラピー。
《ハコミ》とは「ハキミ(hakimi)」とも呼ばれるアメリカ・ホピ・インディアンの言葉で、現在日常的に使われている意味は、「あなたは何者か」というものです。
ハコミ・セラピーは、主としてコア・マテリアル(中核的問題)とワークしていきます。それは主として、なんらかの体験を呼び起こし、その形成過程を学習することを意味します。誰もが、自分独自の見方で世の中というものを理解していきます。味づけをするわけです。風鈴が鳴るとき、響く音からは原因となっている風よりも、むしろ、風鈴の材質や形、大きさなどについて知ることができます。同じように、ワークの中で呼び起こされた体験というものは、そのワークをとりまく環境条件というよりは、クライエント自身について多くの情報を持っています。同じ条件下にあったとしても、別の人が同じ体験を持つことはありません。むしろ、正反対だったりします。ですからワークの中で体験する内容は、その人のコア・マテリアルを映し出しているのです。
私たちのほとんどの行動は習慣的で、コア・マテリアルによって自動的に決定されています。コア・マテリアルは、私たちの個性を形作っている習慣やふるまいなどを通じて現われてきます。したがって、体験の形成過程を学ぶということは、このコア・マテリアルからの影響を学ぶことでもあります。

ryouhou15_3マインドフルネス(ある種の瞑想状態)状態でワークするハコミ・セラピーは、ノンバイオレンスを謳う。「こころと身体の相関性」を重視するハコミの最大の特徴は、そのワークの「繊細さ」である。一般的な西洋の心理療法に比べて、内省的かつ人間関係を重視するハコミは、自己を表現することに不慣れな東洋人にとって、最適な総合的心理療法といえるだろう。

心理療法15