家族療法  family therapy

ryouhou14_1家族を相互に影響を与え合っている人間で構成されている一つのまとまりを持ったシステムとみなし、その家族システムを治療の対象とする治療的アプローチの総称。
個人療法は病理を個人に求めるが、家族療法はそれを家族システムに求めることが特徴である。症状を出していた患者が治療が進み回復してくると、交代に他の家族メンバーが発症する例などが経験されるが、これは家族システムの病理が変らず存在しているために生じている現象と理解される。家族療法では、患者は家族システムの病理を代表して症状や問題をあらわしている家族メンバーという意味で、IP(identified patient)、患者の役割を担う人、と呼ばれる。家族は症状を出している家族メンバーに「患者」というレッテルを貼り、「患者」のみを問題としている。治療者は家族がみなす「患者」を「患者の役割を担う人(IP)」としてみていくことで、家族の見方を変え、治療の中で問題の焦点を個人から家族全体の問題へ転換していく。

ryouhou14_3家族療法の理論的展開の中で、ベイトソンは「二重拘束説」を発表する。
二重拘束・・・二者関係において、一人が相手に意識的、言語的なメッセージと、それと矛盾する非言語的なメッセージの二つの次元の異なるメッセージを同時に出すと、それを受け取った側は混乱し、どう返答しても罰されるので逃げ場がなく、常に葛藤状態に置かれてしまうこと。このような矛盾したメッセージが繰り返し与えられると、受け手はそれを解決する手段として思考障害や情緒障害をおこす。これが二重拘束説の仮説である。二重拘束説によってパラドキシカルーコミュニケーションの病理的側面が明らかにされたが、家族療法の中の戦略的アプローチ派は、そのパラドックスを治療的に家族メンバーにかけることで、家族が変化しないわけにはゆかないようにもっていく。治療的パラドックスには「症状の処方」「抑制」などがある。症状の処方は、クライエントにもっと症状を出すように指示することによって、クライエントがそれに従えば、症状を自分で意図的に出せ、自分で症状をコントロールできたことになり、逆に、治療者に抵抗し指示に従わなければ症状を諦めるしかなくなり、どちらにしても症状を克服することになる。「抑制」は、変化するな、と禁止したり、再発の予告をし、それとは逆の動きを引き出す技法である。

ryouhou14_2家族機能(family functions)

家族機能の本質について、社会学において以下の5つの点があげられている。1.性的機能:個人に対しては性的欲求の充足、社会に対しては性的統制、 2.生殖的機能:子どもを生むことによって、個人にたいしては親になる欲求の充足、社会に対しては社会成員の再生産、3.経済的機能:個人と社会に対し経済的秩序の維持、4.教育的機能:第1次集団として、個人と社会に対して社会化と文化の伝達、5.心理的機能:情緒的人間関係の場である家庭をつくり、個人と社会に対して情緒的安定と社会の安定化。さらに心理学の領域からは、個人と家族の発達課題に取り組み、心身の成長を促進する機能や心理的社会的な問題の解決機能、などをあげている。

心理療法14