箱庭療法   Sandspiel,sand play technique

ryouhou12_11929年にローエンフェルト(Lowenfeld,M)が、子供の遊びにヒントを得て、心理療法の方法の一つとして使用したのが最初。河合隼雄は、この療法が日本人にとって馴染みやすいものとして、1965年に日本に紹介する。箱庭療法は、砂の入った箱の中に、玩具を置いて、何らかの表現をさせるものである。自己の治癒力を引き出すための一つの手段となっている。
今日のわが国の心理療法では、言語コミュニケーションが一番ポピュラーなものであるが、夢・箱庭・コラージュ・絵画・音楽などの、もともとの表現が言語的でない素材が、心理療法に多く用いられるようになってきている。言語的表現に比べて非言語表現は、柔軟性に富み、意味の幅が広く、可塑的である。セラピストにとってもクライエントにとっても、非言語的表現は意識的に操作しにくいし、コントロールしにくい。これらの性質は、自分のイメージにぴったりする表現を容易にすると同時に、現実吟味を危うくしたり、必要な防衛網を突破してしまう危険をもつ。それだけ内界の直接表現が可能なため、夢や箱庭のプレイは強力で有効な心理療法の手段となる。

箱庭療法はもともとサンドプレイと呼ばれているように、プレイセラピーとの類似性が高い。箱庭療法はプレイセラピーに比べてクライエントの適応年齢幅が広いこと、ミニチュア玩具を箱に置き、直接行動的なプレイを用いないことが最大の相違点であろう。それ以外の感覚的なものはプレイセラピーと近似した性質を持っている。
子どもの場合は、箱庭の枠をはみ出して、箱庭の外へ箱庭で置いた路線を延ばしたり、箱庭をウルトラマンの基地として使ったりすることもある。子どもの場合はミニチュア玩具自体がプレイの玩具の一種であったり、象徴的な表現手段であったりするが、大人のクライエントは、枠からはみ出すことが少なく、ミニチュア玩具を象徴的に使用することが多い。

材料 砂箱:内法57cm×72cm×7cmの箱に砂を入れる。箱の内側は青く塗ってあり、砂を掘ると水が出ているように見える。ミニチュア:特に指定はなく、いろいろな種類のものを大小取り混ぜて用意する。基本的には、人物、動物、植物、建物、乗り物、橋、柵、石など日常的な風景の中にあるもの、怪獣、宗教的なものやビー玉、タイル、鏡など。

ryouhou12_2特徴

  1. 非言語性・・・言語を必要としないでコミュニケーションが成立する。言語で表現しようのないものを表現しうる。
  2. 簡便性・・・技術の有無による優劣が目立たず、取り掛かりやすい。時間もかからず簡単なわりに、美的感覚を満足させることもでき、カタルシス効果もある。
  3. 触覚性・・・多くの人は砂の感触から退行状態を誘発される。リラックスしてきて自己の深いところにあるエネルギーや可能性を持ったイメージがよびさまされる。
  4. 視覚性・・・箱庭は直接的、具体的、集約的にその人の世界をあらわす。自分の世界を改めて距離をもって見直すことから自分自身についての洞察が生まれる。
  5. 置き手の世界であること。
  6. 実験可能性・・・箱庭の材料は動かそうと思えば簡単に動かせる。実際の人生において実験を試みるにはかなりの勇気がいるし危険も大きい。しかし箱庭であれば守られた枠の中での比較的安全な実験が可能である。
  7. ドラマ性・・・箱庭に表現されているのは単なる静的な場面ではない。イメージの中でその世界は動いている。初めはよく分からなくても作り続けているとドラマが流れ、主題が焦点化されてくることが多い。
心理療法12