愛する二人へ、
どこから物語を始める?
あなたたちの誕生?
それはかけがえのない愛の物語。

ナワル・マルワン夫人の遺言でこの物語は始まる。
突然、プールサイドで朦朧とし、ショックのあまり口も聞けなくなって死んだナワル。

そのナワルの遺言は、愛する双子の子どもに宛てて書かれていた。

遺言には、ジャンヌには父親あての手紙、シモンには兄宛の手紙があり、それぞれ手渡すように書かれていた。
ジャンヌとシモンは、今まで一度も聞いたこともない兄の存在や、父親は死んだと思っていただけに、母・ナワルの遺言に戸惑い、憤る。

遺言を無視しようというシモンと、遺言を実行しようとするジャンヌ。
ジャンヌは、若き日の母の写真を唯一の手がかりにして、カナダから母の故郷の中東へと行く。

異教徒の男性と駆け落ちが見つかり、男性は射殺。
お腹にいた息子を出産の後、子どもは孤児院に預けられる。
足に印をつけて、いつか必ず見つけ出すと心に誓うナワル。
南部の故郷から出て、叔父の家に暮らすようになったナワルはフランス語を学ぶ。

中東の不穏な情勢の中で、宗教がらみの弾圧が繰り返される。
大学は閉鎖され、それを機に息子を探しに南部へ戻ったナワルだったが、破壊された村に子どもの姿を見つけることは出来なかった。
何の罪もないであろう人々が殺されていく。
そんな現場を見て、ナワルは決心する。

ジャンヌは、そんな母の人生を辿る。
想像もできなかった母の人生がそこにはあった。

「歌う女」という名を持ち、闘い続けた母の人生を追ううち、辿り着いた事実は、15年間もの間、投獄され、頑なに抵抗を続けるナワルはレイプされ、そして子供を産んだという事実だった。

シモンも中東に駆けつけ、ジャンヌと共に母の軌跡を辿る。

投獄中に産んだ子供は助産婦の助けで命は救われる。
監獄から解放されたナワルは、周りの協力を得て、カナダへと脱出する。

時が経ち、子どもは大きくなる。
そんなある日、プールで泳ぐナワルのの目に、足の印が飛び込んでくる。
思わず、その人の顔を見たナワルは、愕然とする。

ナワルの回想とジャンヌとシモンが母から託された遺言の手紙を渡すべく、母の故郷で母の人生を追いかける。

自分たちの知る母とはまるで違う母の人生。
その母の生きてきた人生の軌跡を追いながら、いつしか、自分たちの歴史も知るようになる。

ラストの意外な結末と、二人の心の動きがサスペンス・タッチで描かれている。
遺言が無ければ、おそらく知ることのなかった母の人生。
そこには、母ナワルの愛と闘争と苦しみの歴史があった。
惹きつけられながらの130分近く。
見終わった後、すがすがしい爽快感と、心に刻まれるような深い爪痕が残った。

(J)

「灼熱の魂」