川本 喜八郎 監督

木彫りの人形を使い、撮影したアニメーション映画。

「チベット死者の書」「エジプト死者の書」など死に関しての本は出されているが、アニメーションで
「死者の書」を見たのは始めてで、興味深く見る。

8世紀中頃の奈良の都。
朱雀大路を馬で行く大伴の家持。

藤原家の『しき』と呼ばれる石垣の中には、藤原家でも特に美しいと言われる、南家の姫君である郎女(いらつめ)が居る。
郎女は、美しいばかりでなく、才女でもあり、父上から送られてきた日本でも数少ない経を写経していた。

多くの時間を写経に費やし、1000部を書き終わったとき、郎女は家から抜け出し、かつてから気になっていたふたかみの山に向かう。

嵐の中をもろともせずに、辿り着いた先は女人禁制の寺の結界の中。
そして、そこで彼女は當麻の語り部の老女に会い、殺された大津王子の話を聞き、その王子が、この世に執心を残して亡くなったことを知る。

この大津王子が、郎女に恋し、夜な夜な現れて、彼女に子供を産ませようとするが、『南無阿毘陀佛』と唱える彼女の前から消えてしまう。

その裸のお姿を見た郎女は、せめて着物をと、糸を作り、機で布を織り、そして、糸で仕立て、最後に夢で見た風景を描く。

その布が仕上がるとき、一筋の涙がほおを伝わり、そして、郎女は一人で家を去る。

昔からの日本の物語にはよくあるストーリーかもしれないこの話。
ひた向きな郎女が、自分の思いを一身に込めて織り上げた布。
殺された無念さを心に秘めて、せめて形見の子供を残そうとする王子。

ただ凄いのがアニメーションの動きである。
表情のないはずの人形が、情緒豊かに動き感情を見事に表わす。
文楽にも通じるこの人形の動きの見事さは、見る人を引き込む。

わずか20~30センチ程の人形にこんなにも素敵な表情が出せるなんて本当に凄いと、唯々感心した次第である。

(J)

「死者の書」