“孤独の彼方に漂流する者の感動的な記録”  自伝の書評より

ジャン=ドニミク・ボビー
42歳
子供 3人
ELLE 編集長
脳梗塞で全身麻痺 唯一左目のみ動く。

伝えたい文字をまばたきだけで言葉にする
20万回のまばたきで自伝を書いた男 ジャン=ドー。
そして、本が出版されて10日後に亡くなる。

ジャン=ドーは3週間の昏睡状態から目覚めたとき
医師から、「閉じ込め症候群(ロックトイン・シンドローム)」だと聞かされる。
身体は潜水服を着たように重く動かない。

ジャンは、言語療法士のアンリエットにまばたきで会話するように訓練を受ける。
一度のまばたきは、YES.
二度のまばたきは、NO.
また、理学療法士などの指導のもと自分で食べたりしゃべれるように訓練も受ける。

ジャンは言う。
『わたしは望む 死。』
『生きるとはこんなことなのか』

そんなジャンの基に一人の知り合いの男が訪れる。
ベイルートでハイジャックにあい、4年4ヶ月2週間と5日間、人質として拘束されてた人。
狭くて暗い地下室に閉じ込められた男。
暴力・不潔・残虐。
そして何よりもつらかったことは何もしないこと。
その中で、自分は決して“人間性”を捨てなかったと・・・。

“人間性”って何?
人間らしさってどういうもの?”

思いは、楽しかった日々へ!
そして、その中でジャンは自分で自分を哀れんでいることに気づく。
自分を哀れむのを止める。

麻痺していないものは2つある。
記憶と想像力。
点滴の食事のかわりに豪華な食事を想像し、記憶の中で旅をする。
想像は、時間と空間を越え、無限を越える。
そして、心は、蝶のように自由に舞う。

自伝を書き始めた彼は、少しずつだが動きを取り戻していくのだが・・・。

時計の針が逆回りするようにジャンは眠りにつく。
1997年3月9日死去。
自伝が出版されて10日後43歳でこの世を去る。

何とも言いようのない感動がこの映画を見た後訪れた。
寝たきりになる前の彼の華やかな生活とまばたきのみでコミュニケーションをとる彼のそのギャップは凄まじい。
その彼が、その生活の中で“自分を生きる”

もし私ならどうする?
言葉にはならないものが心を過ぎ、答えを模索しながらも、答えを出したくない私がそこに居た。

(J)

「潜水服は蝶の夢を見る」  Le Scaphandre la Papillon