ナンニ・モレッティ 監督・主演

精神分析医のジョバン二には、“家族”がいる。
妻パオラ、娘のイレーネと息子のアンドレアの四人の家族。
その息子アンドレアが海の事故で死ぬ。
悲嘆にくれる家族。何かが消えていく家族。
泣き叫ぶ母パオラ。
バスケットの試合でけんかをする姉イレーネ。
何かが欠けていると感じるジョバンニ。
強迫行動や感情のコントロールが出来なくなるジョバンニ。
そしてジョバンニは決心する。
“精神分析医をやめよう”と。

そんな日々の中に、一通の手紙が息子アンドレア宛に届く。
家族が知らなかった息子アンドレアの秘密。
息子には恋人がいたのだ。
その恋人アリアンナに出会うことで、何かが変る家族。

まるで美しい絵画を見るような「幸せな家族」が、息子の死により変化していく。
愛情の対象であった息子の死によって、その「幸せな家族」は形を変えていく。

美しくそして悲しく、そして寂しくもある映画である。
人として大切なものを失う切なさと苦しさ、本来なら支えあえる「家族」がその何かを失うとき、こんなにもろくも崩れていくものなのか。
そして息子の恋人の出現で、この家族が手に入れようとしたものは、何なんだったんだろうか。
(J)

愛着 attachment と 依存 dependency
人間は、同じ哺乳動物の中でも留巣類に属する。
留巣類とは、出生時にまだ未熟児で視覚・聴覚・運動機能が未熟である。
もっぱら母親に愛着するしか生きるすべがない。
ヒト・サル・イヌ・ネコはこの留巣類に属する。
これに対して、ウマ・ヒツジは、自食類である。
彼らは出生後ただちに歩行することができ、視覚・聴覚も機能する。
母親から離れて自分で自由に行動する。
その結果この愛着・依存である母親もしくは養育者との対象関係が心身の発達を円滑に進め、心身の均衡を保ち、その精神機能を十分発揮するための基礎となる。
少なくとも対象喪失が起こるためには、この対象像が他の対象像と識別される唯一独自で、しかも一定の恒常性と同一性を持つものとして心の中に形成されていなければならない。
小此木啓吾著 「対象喪失」より引用

「息子の部屋」と対象喪失