2011年
アルゼンチン・スペイン・ドイツ合作作品

高僧ビルと低層ビル
合理と非合理も隣り合わせ
フランス様式と無機質な建物
不揃いな建築は僕たちそのもの
美学と倫理観がバラバラ
この一貫性のない街は無計画のたまもの
まるで僕たちの人生
どう生きたいのかも分からない
街に住んでも旅人気分
僕たちの文化は一過性
ビルはどんどん小さくなり数ばかり増える

超高級な住居もあれば
〝靴箱”と呼ばれるワンルームもある
人が発明した物らしく
建築も住人の間に差をつける
正面と裏側
上層階と低層階
高級住宅は〝A”か〝B”で示される
アルファベット順に質が落ちていく
眺望と明るさを求めても失望するだけ
河を背にした街だから
僕が思うに破局や離婚 家庭内暴力
過剰なテーブルテレビ
会話の欠如 倦怠感に無気力
抑うつ症状 自殺やノイローゼ
パニック発作や肥満 肩こり 不安
心気症やストレス
建築物が生み出している

サンタフェに住むマルティンは、10年前からコンピューターの前に座っている。
彼の職業はウェブ・デザインだ。
2年間引きこもり。
外出恐怖症を患っている。
恐怖症は、治療のために精神科に通っている。
電車やバスはダメ、当然飛行機も駄目。
リュックに5,8キロの荷物を詰めて、それを背負って徒歩で街を歩く。

マルティンは彼女が残していった犬と一緒に暮らす。
40㎡の〝F”の部屋で小さな窓が一つあった。

マリアナは女性建築家。
3年間に建てた建物はゼロ。
4年前に恋が終わり、それ以来エレベーター恐怖症になり何時も階段で上り下りしている。

サンタフェの靴箱と呼ばれるGクラスのワンルームの部屋に住む。
彼女の愛読書は『ウォーリーを探せ』だ。
いつもウォーリーを本で探すがなかなか難しい。
そう自分の理想の恋人と出会うのも難しい。

ある日、バルコニーから犬が飛び降りて二人が怪我をする。
街を歩いていたマルティンとマリアナはその場に居たが出会いはない。

マルティンは、ネットで精神科医の女性とデート。
ネットの写真は実物より良い。
話しながらも理想の出会いは難しい。

マリアナは、いつも通うプールでうまく泳ぐテクニックを教えてくれた
精神科医の医師とデートするが、こちらもうまくいかない。

イライラした二人は、違法とは知りながら壁に窓を開ける。
光が部屋に差し込み、すがすがしい思いに溢れる。

いつ電線のない街に?
建物で河を 電線で空を
塞いだのは一体だれ?
何キロもの電線は人をつなぐため?
それとも互いを遠ざけるため?
いつもつながる携帯電話は世界を侵略した
携帯メールはテンキーで打てるように世界で最も美しい語彙を
原始的で限られた語彙に矮小化した
未来は光ファイバーにあるらしい
オフィスから自宅の温度を調整できるという
もちろん
家は暖かいが誰も待っていない
これこそ仮想世界の時代

ラインでマルティンとマリアナは会話する。
慣れないマリアナにマルティンは方法を使える。

精神科の治療に通っていることや、プールでも出来事や、上手くかみ合い、互いを理解しようとする二人の会話は突然の停電で終わってしまう。

マリアナは、いつものように、『ウォーリーを探せ』を見る。
ふと外を見ると、ウォーリーがいるではないか!!
思わず外に駈け出したマリアナは、エレベーターに乗り外に出る。
そして、道を歩く『ウォーリー』に見えたマルティンと出会う。

映画の冒頭のシーンで、サンタフェの建築物が次々と映る。
新旧取り混ぜて、様式も様々な建物は、現代の雑多な情報に溢れる世界そのものに見えた。

自分に合うモノはどんなもの?
絶えず自分に問いかける。
そんな思いを恋愛に乗せて語りかけるような作品だ。

(J)

「ブエノスアイレス恋愛事情」