2013年 ドラマ映画

第86回 ベルリン国際映画祭
銀熊賞審査員グランプリ受賞
主演男優賞受賞
エキュメニカル賞受賞
ボスニア・ヘルシェゴヴィナ代表 作品

ヨーロッパの片隅に生きるロマ一家は、社会でもマイノリティだ。
車の解体をして生活をしている。
車一台解体してやっと約150~70マルクぐらいの収入になる。

ナジムは、妻セナダと二人の娘、サンドレとシェムサと暮らす。
雪の降る寒い中を今日も槇を切って燃料にする。

ある日、セナダがお腹が痛いと言い出す。
翌朝まで様子を見ていたが痛みは治まらない。

車で病院に行くが、流産だと言われて、早く手術をしないと危ないと言われる。
その足で産婦人科を受診するが、ナムジには保健証がない。
病院から保険なしの手術には980マルクかかると言われるが、ナムジにはそんな大金はない。

病院に掛け合うが病院長はお金がないと手術はしないと言う。
一度は諦めて家に戻るが、お腹の痛みは治まらない。
このままでは命も危ない。

再度車を飛ばし病院の医師に掛け合うが、駄目の一点張りで埒が明かない。

翌日、ナムジの車は動かなくなる。
押しても引いても動かない。

バスで町の福祉を訪れる。
福祉の人は、再度病院と掛け合うが、やはりお金がないと駄目だと言う。
そしてナジムは「子どもの地」へと駆け込む。
そこでどんなことをしても助けると言われて、家に戻りセナダに話すが、今度はセナダが『病院には行っても無駄だから行かない』という。
症状は相変わらずでお腹の痛みは無くならない。

そこで思い付いたのが、義理の妹の保健証だった。

義理の母親や妹に事情を話し、保険証を借りることになる。

極貧の生活の中でも、どうにかして愛する者を助けようとするナジムに画面から目が離せなくなる。

この物語は実話で実際のナジムとセナダが自分たち自身を演じている。

病院に行かないと言うセナダを説き伏せて、近所の人から車を借りる。
断わられた病院ではなく二件目の病院に行く。
セナダはすぐに手術をして助かるが、もう少しで手遅れだったと言われてナムジは思わずほっとする。

しかし、薬代も高い。
家に帰ったナジムは、近くの仲間と自分の車を解体しそのお金を病院代と薬代に当てる。

最後の場面で、家の中でくつろぎ、寄り添う二人の姿が映る。

地味な映画だが思わず『幸せって何だろうか』と考えてしまう。
そんなハラハラしながらも、ほんのりと暖かくなるような映画だった。

(J)

「鉄くず拾いの物語」