2001年 ヴェネティア国際映画祭 金獅子賞 受賞作品

フランス革命時代のパリ、ルイ16世と王妃マリー・アントワネットが、革命により、その地位を追われ、投獄の後に処刑された。

そのフランス革命を、パリに住む一人の女性の目を通じて描く作品である。
フランス革命は史実として描かれることが多いが、この作品は、イギリス人で王党派でもあったグレース・ジョージナ・エリオットと、ルイ16世の従兄でもありながら、革命派として知られたオルレアン公爵フィリップとの物語を通じて描かれる。

〝グランド・レディ”と呼ばれた、グレース・エリオットは、スコットランド・エディンバラの弁護士の娘として生まれた。
フランスで学び、富豪 ジョン・エリオットと結婚する。
別れて後、エリオットの美しい自画像を見た王太子(後の国王ジョージ4世)が、修道院にいたエリオットを愛人とする。

女の子を一人出産するが、オルレアン公爵の愛人になり、1786年フランスに移り住む。

映画はエリオットとオルレアン公との愛人関係が終わった後、考え方の違いもありながら、生涯相手を思いやり、深い愛情を注ぎあう二人を描く。

パリでは革新派が幅をきかせるようになるが、王党派のグレースは国王への献身を言葉にしていた。
オルリアン公とは意見の違いを話すが、
一向に埒はあかない。そんなグレースにオルレアンはイギリスに帰るように忠告するが、グレースは今こそ国王への忠誠を誓うときと、彼の忠告を聞かない。

1792年8月10日、パリで急進派が宮殿を襲い、国王一家は逃げ出す。

10月・6月と騒動は続いていたが、次第に、パリの街は貴族を憎む平民が蔓延り、さすがに、グレースもわが身を案じて、一時はムドンの丘の家へと非難する。
そのムドンの家に送られた一通の手紙で再びパリに帰ったグレースが見たものは、市民による貴族への惨殺だった。

パリでは、貴族は次々と首をはねられてたり捕まって死んでいく。

死刑を宣告されていたシャンス侯爵を助けたグレースは、その事で危うい目に遭うが、その危機を助けたのもオルレアン公だった。
自分の敵にあたるシャンス侯爵を、オルレアン公はグレースのために救う。

やがて、革命派のオルレアン公にも身の危険が迫り始める。

グレースも憲兵に目を付けられ、検問にも引っかかる。
家は捜索され一通の手紙が元で、裁判を受けなくてはいけなくなる。

グレースの無実は証明されたものの、最後の最後まで、グレースの身を按じていたオルレアン公は殺されてしまう。
グレースも捕まり拘束されたが、遂にギロチンにかかることなく解放された。

立場を変えて歴史を見ると、革命派は、多くの一見罪のない人たちを殺したように見える。
いずれにしても多くの血が革命によって流された。
20世紀は戦争の世紀と言われる。
それだけに、流された血の数だけ悲しみも深い。

貴族の傲慢で横柄であっただろう生き方を変えるために、流された涙はどんなものだったのだろうか。

映画の冒頭に、絵画から抜け出すように人が動き出す。
今でも残るパリの景色が歴史を物語りだすのが興味深かった。

(J)

「グレースと公爵」