第63回 ベネティア国際映画祭 金熊賞 受賞
国際映画祭 批評家連盟賞 受賞
ルーマニア・アカデミー 8部門受賞 作品

お前は私のすべて
守るためなら 何だってする

コルネリアは、舞台装置の演出をする建築家だ。
著名な人々に囲まれて、誕生日のお祝いをする。

その席に息子のバルブは居ない。
一番来てほしい人なのに、電話をかけてくるだけ。

『息子の恋人が悪い。彼女と暮らしだしてから、息子は変わった。』
息子の恋人であるカルメンは、シングルマザーで、カルメンの子どもにも息子によく懐いている。
そんな二人の様子を、コルネリアは家政婦から聞き出す。

そんなある日、夫の妹からバルブが交通事故で子どもをはねて殺したことを聞かされる。
慌てて警察署に行ったコルネリアの前には、うな垂れて元気のない息子が居た。

車を追い越そうとして時速制限110キロの所を150キロ近く出して子どもをはねた。
子どもの親戚の人に激しく罵られながらも、コルネリアは、バルブを守るのは自分以外居ないと思う。

弁護士に連絡、やり方を考えて懸命に動く。

そんな母親にバルブは冷たい。
『構わないでくれ』と言い放つ。
母と息子の確執は根深い。

お金を使い、人脈を使い、何とかして息子を守ろうとするコルネリア。
夫でもあり父親でもあるアウレリアンは、コルネリアの言いなりである。

息子に冷たくされながらも、必死に役に立とうとするコルネリアは、遂に息子に言い放つ。
『すべて自分でしたことなのよ。』

被害者の家族に誤りに行こうと言うコルネリアに、バルブやカルメンは拒否するが、やっとの思いで息子を連れだし、被害者の家に行く。
だが息子は車から降りない。

過保護なまでの息子と、その息子をひたすら愛する母親コルネリア。
どうにかしようとすればするほど、うまくいかない。
そして、息子の恋人カルメンから聞いた息子の意外な側面と、必死に生きようとする息子の思いは、やがて、一つの結論へと導かれる。

何処にでもあるような感じでもあるし、さりげない様で何気ない様で、でも意外と根深い親子の確執。
子どもを思うゆえにどんどん立ち入る母親の思いと、その母の思いを分かりながらも断ち切ろうとする息子との思いのずれを、事故と言う出来事を通じて描かれる。

地味な映画だが、味わいのある映画でもある。

(J)

「私の、息子」