2012年 チリ・アメリカ・メキシコ 制作
第85回 アカデミー外国映画賞 ノミネート作品

1988年 チリのピノチェト独裁政治に、是非を問う国民投票が行われる。
投票に先立ち、賛成派も反対派も、27日間の間、深夜に15分のテレビ放送が流されることになっていた。

レネは広告ディレクターで、斬新で新しい広告を作る。
そのレネの元に旧友でもあるウィルティアが、反対派の制作にレネに、関わってほしいと持ち掛ける。

当然、今の政権側である仕事先はいい顔はしない。
上司に立ち会っているだけといいながら、レネはその放送の為に、自分の持つ広告での手腕を使うことにする。

独裁政治の元で、弾圧は繰り返されており、行方不明者や国外追放など様々な事が起きている。
だが、ピノチェト政治は、国民を貧困から救い出したのも事実である。
豊かになった生活と、弾圧の恐怖が共にある。
ピノチェト政治に賛成派「YES」も放映される予定だ。
勝ち目はないと反対派の人たちは悲観的だ。

その中で、レネは人々に楽しく愉快に心惹かれるようなものを作り出す。
「NO」派の中にも、そんな彼の作品に怒りをぶつけるものや、様々な意見があった。
しかしレネは自分の考えを貫き通す。

そしてその報道は、やがて人々の心をつかみ、「NO」の支持率は上がっていくことになる。
一人の広告マンが、自分の考え方で自分のやり方で、人の心にインパクト与え人々の心を掴みとる。
そして、不可能と思われたことを成し遂げていく。

途中で、様々な妨害や脅しにも出会い、自分の子どもに身が危なくなることを懸念し、子どもを人に預けたりしながらも続けていく。

映画の中で、レネの作ったキャンペーン作品が出てくるが、目を引く内容で面白い。
広告というメディアは、人の心を掴むのが大事とは聞くが、成程と頷いてしまう。
国の政権が交代するほどの威力は、思わぬところに隠されているのかもと、感心しながら映画を見る。

(J)

「NO」