2013年 フランス

小さい頃に両親を亡くして、それ以来、記憶と言葉を失ったポールは、二人の叔母と共に暮らす。
だが彼はいつも孤独だった。

ダンスを教える伯母たちと共に、ピアノを弾きながら暮らす。
ピアノの腕はなかなかのものなのだが、コンテストでは優勝できない。
今年が最後のチャンスになるかもしれない。

ポールと伯母たちが暮らすアパルトマンには、謎めいた女性が住んでいた。
名前はマダム・プルーストというらしい。

ふとしたことから彼女と知り合ったポールは、彼女の勧めるハーブティーを飲み、意識を失う。
アスパラガスの入ったその飲み物を飲んで以来、物がアスパラガスに見えてしまうのだ。
そして、マダム・プルーストは、彼に失われた過去の記憶と、両親との思い出を取り戻すように勧める。

週1回で50ユーロのセッションは、ただハーブティーとお菓子を食べるだけ。
そして心に残っている音楽の記憶と共に、過去を彷徨うのだ。

ポールは、次々と様々な事を思い出す。
母の声や父の顔。
皆で踊り楽しんだこと。
しかし思い出は決して楽しいことばかりではなかった。
父と母との諍いや、暴力的だった父のことも共に思い出す。

今までと様子が違うポールに二人の叔母は心配し、麻薬検査をしたり、精神科医に相談したりする。
が何も出ては来ない。
そしてやがて、ポールの両親が死んだ日の記憶が出てくることになる。

過去の記憶は自分の後ろだという人は多い。
後ろ(過去)は普段は目に入らないが、自分の大切な一部なのだろう。

ポールは人とうまくつながれない。
自分ともうまく付き合えない。
話せないからだろうか。
それとも…。

見ていて楽しくなる映画だ。
記憶は生々しく出るのではなく、楽しくウキウキとした感じが多い。

一杯づつのお茶は、一つづつの記憶への導き、不安は涙と共に消し去られる。
コンサートで、今までとは違うピアノを弾くポールは、新しい自分を手にしたんだろう。
そうだといいな。

(J)

「ぼくを探しに」