アイルランド 制作
第26回国際映画祭コンペティション部門 最優秀監督賞受賞作品

のどかな自然と美しい景色のアイルランドに、アイルランド原種の馬は、現在も人々とともに生活の中に居る。
その美しい毛並は、本当に見事だ。
車や様々な生活に必要な乗り物がある中にも拘らず、人間と馬との共存しっかりと生活に根付いている。

だが、自然は美しいだけではなく、時にはその厳しさを見せる。

コンベインは、ソルヴェーイグの家を訪ねる。
もちろん彼はソルヴェーイグに気がある。
もちろんソルヴェーイグもコンべインが気に入っている。
美しいメスの白馬に乗って洋服もきちんと着こみ、颯爽と現れる。

そんな二人の出会いに、とんでもないことが起きる。
お茶の後、ソルヴェーイグの家から帰ろうとしたコンべインのメス馬に、ソルヴェーイグの種馬が求愛。
当然だがコンべインの雌馬も受け入れていて動かない。
大勢の人が見守る中で、馬の恋に付き合う羽目になったコンべインは、とんでもない恥をかくことになる。

ウォッカ好きのヴェルンハルズルは、どんなことがあってもお酒を手に入れる。
自分の馬に乗り、海を行く船に泳ぎ着く。
『ウォッカよりも強いお酒』を手に入れた彼は、帰る道々お酒を飲む。
どんどん飲む。
そして倒れる。

エーギットールの敷地にいる二匹の馬を、グリームルは取り返そうとする。
有刺鉄線を切り、その中に居る二匹の馬を連れだす。
怒ったエーギットールは、自分の馬を取り戻すためにグリームルを追いかける。
トラクターで追いかける。

二匹の馬と二人の男は追いつ追われつ道を行く。
やがて、有刺鉄線で目に怪我をしたグリームルは、自分を避けようとしたトラクターには気がつかない。
そして、トラクターは事故を起こす。

ヨハンナは、逃げた馬たちを追いかける。
うまくつかまえたがそこで怪我をしているグリームルに出会う。
馬たちとグリームルを引き連れて、彼女は道を急ぐ。

何気ない日常の、何処にでもあるような出来事を、馬と共に、自然と共に描く。

憎しみも裏切りも、悲しみも喜びも、美しい風景の仲へと溶け込み流れていく。

普段目にすることのない雄大な風景は、画面から溢れだし癒しを与える。
そんな一風変わったタッチの映画だった。

(J)

「馬々と人間たち」